その山を見上げて

読書と思考を積み上げていきます。

『センスは知識からはじまる』──センスを磨くには

「センス」という言葉は一種の呪いにも近くなっているように思います。

みんな気軽に「センスがいい」「なんかセンスないな」等、「センス」という言葉を使います。

しかし、結局それらは「なんかいいなと思った」、「なんか嫌だな」というような感情を上手く言語化できず「センス」という言葉に逃げているだけかもしれません。

それならば、「なんかセンスないな」とか言われてしまった人はどうすればいいのか?

ただただ頭を抱えるか、良いとされているものをまねるか、でしょうか?

これに対する回答という観点でも、本書のタイトルは非常に魅力的に感じました。

今回は『センスは知識からはじまる』を読んで、「センス」の根源は何なのかを少しだけ考えてみます。

この本について
『センスは知識からはじまる』の書影
『センスは知識からはじまる』
著者
水野学
訳者
-
出版社
朝日新聞出版
発行日
2014年4月18日
※書影は出版社公式サイトより引用
目次

私的要点

  1. 1

    「センス」は知識の集積である

  2. 2

    「センスの良さ」は、数値化できない物事の良し悪しを判断し最適化する能力のことである。

  3. 3

    何かをデザインするなら、その周辺知識もしっかり収集する

  4. 4

    普段から好奇心を持って物事を見ておくことで、間接的にセンスが磨かれる

所感メモ

個人的に本書の2大”学び”としたい内容を書いておきます。

知識の集積

私的要点1にも書きましたが、本書では「センス=知識の集積」と述べられています。

それが一番よくわかると思った個所を引用してみます。

 たとえばiPhoneは、かつてなかった商品とされますが、固定電話、携帯電話という流れに沿ったものです。AKB48おニャン子クラブモーニング娘。の流れをくむものでしょう。インターネットにしても、飛脚、郵便、電報、テレックス、ファックスという通信手段の流れの中にあります。

 つまり、過去に存在していたあらゆるものを知識として蓄えておくことが、新たに売れるものを生み出すには必要不可欠だということです。

『センスは知識からはじまる』P.78-79より引用

確かにその通りです。

本書でも後の章で直接言及されていますが、イノベーション」の文脈でも捉えられそうな表現です。

イノベーション

新しい組み合わせによって、既存の価値やルールを作り替えること

厳密に言えばちょっと違うでしょうが、要は「新たな再結合」です。そして、それを起こそうと思うなら、先ほどの引用部分でも述べられている通り、「あらゆるものを知識として蓄えておく」はとても理にかなっていますよね。

そして、その知識から「新たな再結合」を生み出すことができたとき、周囲の人からこう言われるわけですね。

「君、センスいいな!」と。

非常に納得感のある、まさに本書のタイトルを象徴するような内容だと思いました。

普通を知る

そしてもうひとつ、「普通を知る」ということ。が「センスの良さ」を測るのにとても有効であるということです。

これについて述べられてみた部分を引用してみます。

 では、普通とは何でしょう?

 大多数の意見を知っていることでも、常識的であることとも違います。

 普通とは、「いいもの」がわかるということ。

 普通とは、「悪いもの」もわかるということ。

 その両方を知った上で、「一番真ん中」がわかるということ。

「センスが良くなりたいのならい、まず普通を知る方がいい」と僕は思います。

『センスは知識からはじまる』P.19-20より引用

これは私も非常に同意できます。

私は昔から製品のグレードが複数あれば

  • スタンダード
  • オリジナル
  • オーセンティック

こういったものが大好きです。
まずここから手を付けようと考える人間です。(挑戦しない・できない人間とも言う)

例えば、これの他に

  • プロ(豪華版)
  • ジュニア(廉価版)

があったとしても、スタンダードを知っているから

  • プロ(豪華版)の付加価値が評価できる
  • ジュニア(廉価版)のコストダウンの巧拙がわかる

普通を知っているから、その製品、その企業の良し悪しを適切につかめる。

要は「基準(ベンチマーク)をしっかり押さえておこうぜ」ということですね。

これについて私は「やはりそうだよな」と思える内容でした。

この内容をどう生かすか

実践に落とし込むなら、単に「知識をたくさん集めよう」では漠然としすぎて行動に反映されないような気がしましたので、少し変えてみます。

ある種「思考の型」として捉えてみる

当ブログで「思考の型」という概念に触れることが増えてきました。

「メンタルモデル」、「フレームワーク」、本により言葉はまちまちですが、共通しているのは型を身に着け、その型に沿って考えると良いということ。

そこで、先ほどの「周辺知識を集める」という考えを、一種の「思考の型」として捉えてみるのはどうでしょうか?

本書で提唱されている方法を超簡単に書いてみます。引用しづらい構成でしたので、私がまとめた内容です。詳細はぜひ本書を読んで確認してください。

何かをデザインする際の「型」、調査の「型」として捉えてみます。

  1. 王道を知る
  2. 現在の流行を知る
  3. 共通項が無いか分析
  4. 集めた情報・共通項から仮説を立てる
  5. 仮説を検証、必要に応じて修正

後は、4と5を繰り返して結論にたどり着くことを目指します。

無意識にこういった流れで調査をしている人もいるかと思います。そこで、あえて「型」として認識してみる新たな発見や発展の道筋が見えるかもしれません。

私もこの「型」を念頭に置きつつ、読書に適用できないか考えてみます。

関連する読書メモ

・『世界一流エンジニアの思考法』

「メンタルモデル(≒思考の型)」を使って考えるのが良いという記述が登場します。

bookandthink.com

・『バカロレアの哲学』

フランスの高校では哲学が必修となっており、それは「思考の型」を学ぶことが目的だという話です。「思考の型」の話を出しましたのでリンクを貼っておきます。

bookandthink.com

気になった言葉

後日調査したらリンクを追加予定です。

ひとこと

「センス」という捉えどころのない言葉への一つの解釈としてとても有用だと思います。

そして何より、「センスは後天的に磨けるものである」という主張自体にとても救いがあるようにも思います。

誰かの無責任な「センス」という言葉にとらわれている方は一度読んでみると視界が開けるかもしれません。