その山を見上げて

読書と思考を積み上げていきます。

『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』──ミニマリズムとは「幸せ」の過程

日本人ミニマリストの代表格である佐々木典士さんの著書です。

ミニマリズム本」の中でもとくに有名ですので、読んだことがある、読もうと思っているという方も多いのではないでしょうか?

今回は『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』を読んで、ミニマリズムについての見識を深めていきたいと思います。

書籍情報

※私はちくま文庫の[増補版]を読みました。

『ぼくたちに、もうモノは必要ない。増補版』の書影
『ぼくたちに、もうモノは必要ない。増補版』
著者
佐々木典士
訳者
-
出版社
筑摩書房
発行日
2019年2月7日
※書影は出版社公式サイトより引用
目次

この本について

どのような本か

著者のミニマリズム実践経験を中心に

こういった内容を通して、ミニマリストの思考とミニマリズムの実践について著者の見解がまとめられた本です。

どんな人に向いているか

当たり前のことですが、ミニマリストである著者の主観で書かれていますので、「ミニマリズム」に対する客観的な視点での分析を求めるようなことは難しいです。

私的要点

  1. 1

    ミニマリストとは「大事なもののために減らす人」

  2. 2

    増えすぎた”モノ”により現代人の思考リソースが喰われている

  3. 3

    執着を手放し、「今」に感謝して生きることが幸せである

所感メモ

本書を選んだ理由

何をおいてもまず「ミニマリズム」に関する本では、トップクラスに人気のある本だと思います。

そのため、まずは定番を読もうと思い調べた結果、私は以下の2冊を選びました。

  1. 『より少ない生き方』
  2. 『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』

『より少ない生き方』については記事を書きましたのでリンクを貼っておきます。

bookandthink.com

これに続いて本書を読んでいる次第です。

感想

ミニマリズム」について本を読むなら避けて通れない一冊であると思いました。先ほども書きましたが、

これらかなり詳細に書かれており、

ミニマリズムとは?」と調べたいなら本書一冊で完結できるのではないかと思う程充実していました。

また、それだけでなくミニマリズムの先に何があるか?」までしっかり見解が述べられているのがとてもいいです。

「断捨離して思考がクリアになります。だからみんなもやってみようね」

で終わってしまうのは余りに惜しい概念であると学びました。確かに実践方法やおすすめアイテムも大事ですし、日々に彩を与えてくれるでしょう。

でも、本当に大切なのは「その先に何を見つけるか」であると、そういった内容に触れることができました。

そういった意味でもミニマリズム入門編〜実践編まで幅広くカバーできる本だと思います。

「目的」ではなく「手段」である

本書にはミニマリズムを奨める理由や著者の経験、その実践のための方法が数多く書かれています。

しかし、本質はこちらではないでしょうか?

 ミニマリズムは「目的」ではなく「手段」である。ミニマリズムを通して気づけた大事なことがぼくにはたくさんある。だが、ぼくが気づいたことや、さらに多くのことにすでに気づけている人はミニマリストになる必要は全然ないと思っている。ミニマリストになって気づけた大事なものを、その後も大事にし続けられるなら、モノをもう一度増やしたっていいのだから

『ぼくたちに、もうモノは必要ない。増補版』P199-200より引用

引用部分と同じことを言うようですが、著者にとってミニマリズムの経験は

人生にとって大事なことを知るための過程でしかなかった、という結論ですね。

自身を「ミニマリスト」と定義する方は必ずこの部分を押さえておいた方がいいと思います。ミニマリズムはモノを減らす競技であるという様な妙な誤解をしないようにしたいですね。

ミニマリズムを取り入れるのであれば、モノを減らす過程で自分と向き合うこととなります、そして、その先に「自分の大事なもの」として何を見出すか?

その過程を知ること自体が本質であるという主張であると読みました。

仏教的ミニマリズム

何となく仏教的な考え方がされていると思いました。

サピエンス全史で書かれていた、ゴータマ・シッダールタ(釈迦)の教えについの記述を引用してみます。(本当は仏教の本の知識があるといいのですが…)

(前略)彼は自分の教えをたった一つの法則に要約した。苦しみは渇愛から生まれるので、苦しみから完全に解放される唯一の道は、渇愛から完全に解放されることで、渇愛から解放される唯一の道は、心を鍛えて現実をあるがままに経験することである、というのがその法則だ。

『サピエンス全史 下』(文庫版)P.39より引用

現在、仏教について調べると難しい言葉がずらりと並びます。それはきっとこの教えを歴代の仏教徒たちが体系化しようとした努力の結果なのだと思います。

しかし、(あくまで出典1でしかありませんが)本質はこのようなものというのは少なからず納得感を得られませんでしょうか?

本書にもこれと似た内容が書かれています。該当部分を引用してみます。

 幸せになることはできず、その瞬間に、瞬間に「感じる」しかないものだ。そして人が経験できるのは「今」という時間だけ。たった今、この瞬間の幸せを感じられない人は明日も明後日も、1年後も幸せは感じられない。逆に言えば今から、いつでも人は幸せを感じることができる。

『ぼくたちに、もうモノは必要ない。増補版』P.287より引用

引用部には出てきませんが、本書では感謝とは「物事を肯定的に見る」とされていますので、そういった意味では異なってはいます。

しかし、モノに対する執着を捨て、「今」に集中して感謝して生きる。こういった部分では共通骨格を持っていると言えるでしょう。

よって、部分的にはなりますが、本書のミニマリズムは仏教的であるとも言えると考えました。

結論

ミニマリズム「自分の大事なこと」に気づくための「手段」である。

ミニマリズムについて深く知りたい人は読む価値がある。

発展を考える

これまでで

  • 本書と『より少ない生き方』が2台巨頭
  • 本書は仏教的かも?

と書きました。『より少ない生き方』の著者であるジョシュア・ベッカーはキリスト教の神父をされている方です。よって、ある意味対照的な考えが見られるかもしれません。『より少ない生き方』から引用してみます。

 いちばん大きな夢は、人のためになりたいという夢だ。

 その理由はたくさんある。たとえば、人のためになることをすると、自分だけではなく、他の多くの人にも影響を与える。私たちの人助けを見て他の人が刺激を受けると、人助けの輪がどんどん大きくなっていく。それに人助けには、人と人との絆を深める効果もある。孤独と恐怖、嫉妬と恨みを消してくれる。暗闇に覆われることが多い世界に喜びの光をもたらしてくれる。

『ぼくたちに、もうモノは必要ない。増補版』P.299より引用

「これがキリスト教的だ」と言いたいわけではありませんが、キリスト教には「隣人愛」という概念がありますよね。少なからず「外向的」と言えるのではないでしょうか。

対して著者の佐々木さんは本書のなかでも「自分は内向的」と称しています。

同じ「ミニマリズム」を通して解釈したとしても

  • 外交的:人助けの輪を広げていこう
  • 内向的:「今」を見つめ幸せになる

といったように、かなり結論に違いが出ているは面白いですね。これは個人の感性によって生じた内容でしょうか?やはり宗教や国民性と関係があるでしょうか?

世界の主要宗教の考え方の違いなどは一度調べてみてるべきと思いました。

関連する読書メモ

・『より少ない生き方』

同じくミニマリズム本の定番の一冊です。著者の性格的な違いが如実に表れており、比較対象として大変面白いです。ぜひ一緒に読んでみてください。

bookandthink.com

・『あっという間に人は死ぬから』

自分の「大事なもの」を明確にし、「コントロールできる部分」に着目して幸せを手に入れようという内容が本書の締めとかなり共通しています。併せて読むと別方面から本書と相互に補完し合えるかもしれません。

bookandthink.com

気になった言葉

後日調査したらリンクを追加予定です。

ひとこと

ミニマリズムに関する本としてかなり完成度が高いと思います。

本書だけでもミニマリズムについて体系立てて知ることができますので、入門の一冊にはぴったりだと思います。