世界的な名著です。
読んだことは無くても名前は知っているという方も多いのではないでしょうか?
本書は書名からはなかなか連蔵しづらい内容ですが、「人類史」に関して、文明の発展度合いに差がある理由、そして
世界が侵略する側とされる側に分かれた要因について考察された本です。
人類史に興味のある方はぜひとも直接読んでおきたい本の一冊です。
今回は『銃・病原菌・鉄』を読んで、人類史に関する理解を深めたいと思います。

- 著者
- ジャレド・ダイアモンド
- 訳者
- 倉骨彰
- 出版社
- 草思社
- 発行日
- 2012年02月10日

- 著者
- ジャレド・ダイアモンド
- 訳者
- 倉骨彰
- 出版社
- 草思社
- 発行日
- 2012年02月10日
この本について
どのような本か
1972年7月、著者がニューギニアで出会った地元の政治家「ヤリ」から問いかけれらた疑問
「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?」
P.24より引用
この疑問に応えるべく著者は
- 食料生産
- 社会システムの発生
- 文字や新技術の伝播
こういった観点から文明の発展に大きな地域差が存在する理由についての考察を進めていきます。
どんな人に向いているか
- 人類史を学びたい方
- サピエンス全史を読んだ方
- 農耕・牧畜の発生について知りたい方
私的要点
- 1
文明の発達度合いに差が生まれる最大の要素は「狩猟採取生活から農耕生活への移行」にある
- 2
気候や大陸の形状、周辺地域との交流の有無といった「地理的要因」により、農耕生活に移行できなかった地域は狩猟採取生活を続け、結果ヨーロッパ文明の侵略を受けることとなった
- 3
家畜を持った地域は家畜を通じて病原菌と接触することで免疫を獲得した。同時にこれは、免疫のない地域を侵略する際の武器としても働いた
- 4
農耕生活により余剰食糧の生産が可能となったことが、結果として文字・冶金技術・複雑な社会システムといった現代社会の基盤が生まれる要因となった
所感メモ
本書を選んだ理由
現在私は「定住が人類に与えた影響」について調査しており、その一環として『サピエンス全史』を読みました。
そして、同じく世界的な名著であり、『サピエンス全史』にも多大な影響を与えた本書『銃・病原菌・鉄』の存在を知り、読むことを決めました。
感想
まず何をおいても文庫版にして900ページを超えるボリュームに圧倒されます。
しかし、結果として読んでとても良かったです。
本書のタイトル『銃・病原菌・鉄』から勝手にヨーロッパの歴史の本か?と予想していました。しかし、実際にはポリネシアや南米に関する考察に大きく紙面が割かれています。
- 食料生産が開始される要因
- 農耕生活開始と地理的要因の関連
- 社会システムが発展していく過程
- 文字や技術の伝播
挙げきれないほど膨大な量の情報に触れることができ、私の目的である「定住」に関する調査についてもド直球に読みたい内容を提供してくれました。
これは間違いなく『サピエンス全史』と並び人類必読の書と言えるでしょう。
ただし、先ほども書いた通り特大ボリュームの本ですので、かなり人を選ぶとは思います。しかし、間違いなく読み始めたら止まらなくなる本です。
全ての起点「農耕生活」
本書でも結局のところ一番ページ数を割かれているのは本テーマです。
世界で最初に食料生産を始めた地域の特長として
- 栽培が容易な野生種植物の存在
- 家畜型容易な野生動物の存在
これらが要因となっているということでした。
植物で言えば
- 種をまくと簡単に育つ
- 短期間で収穫可能
- 収穫量ができる量が多い
- 可食部が大きい
動物で言えば
- 雑食性(餌に困らない)
- 人間に危害を加えない
- 社会性を持ち、手なずけやすい
こういった特徴を持った野生の動植物が生活圏付近に多数生息していれば、狩猟採取生活よりも食糧生産を行ったほうがメリットがあるとして農耕・牧畜が開始されました。
また、こういった動植物が豊富でなかったとしても
- 山脈や砂漠で隔てられていない
- 周辺民族との交易が可能
- 小麦、大麦、豆類といった他地域の作物が生育可能な気候
- 牛、豚、鶏といった家畜を飼育可能な気候
こういった地理的条件をクリアできていれば、他地域の栽培家作物や家畜が伝播する形で食料生産が開始されることはあった。
そして、これらの条件を満たさなかったポリネシア、南米といった地域の国々では農耕生活のメリットを享受できず狩猟採取生活を続けることとなった。
自分用の整理となりましたが、こういった流れで食料生産を「開始する地域」と「開始しない地域」が分かれる結果となったという考察がされています。
定住がもたらしたもの
食料生産が開始されることで「農耕生活>狩猟採取生活」と、農耕生活の方がよりメリットを享受できると判断した人々は「定住」を開始します。
私の現在の調査テーマの一つでもありますが、本書の内容を鑑みてもこの「定住」が現代文明を形作ったことに間違いなさそうです。
これに関する記述を一部を引用してみます。
定住生活のはじまりは、持ち運べない所有物をため込むことを可能にしたことにおいて、技術の受容性を決定的に変化させた。野営地から野営地に移動して暮らす狩猟採取民は、持ち運べるものしか所有できない。しょっちゅう移動する狩猟採取民が、車や荷役動物なしに運べるものは、赤ん坊、武器、それに最低限の必需品くらいである。土器や印刷機などを抱えての移動はできない。非常に早い時期に姿を現した技術が、発展するまでに長い時間を要することがあるが、おそらくその原因は、その技術をひっさげての移動がむずかしかったことにある。
『銃・病原菌・鉄』下巻 P.96-97より引用
この記述を読んで、今まで考えていた様々な内容がつながった様な気がしました。
今までは「定住→食料生産→余剰食糧で生きる職人が登場」程度しか考えが及びませんでしたが、この記述によってつながります。
- 農耕開始
- 余剰少量の生産と貯蔵が可能になる
- 余剰食糧で専門職を養えるようになる
- 狩猟採取>農耕 となると定住開始
- 道具や設備を「保管」できるようになる
- 技術が発展する余地が生まれる
こういう流れを経て「技術」を受け入れる基盤が出来上がっていったということですね。そして、これが長い年月を経て鉄製の武器となり、ヨーロッパ人の侵攻を助ける結果となった。
もう一つ気になった記述を引用します。
(前略)貯蔵・蓄積された食料は職業軍人の存在も可能にするが、このことは征服戦争の遂行能力にもっとも直接関係している。
(中略)
食料の貯蔵・蓄積はまた、征服戦争に宗教的な正当性を与える僧侶の存在も可能にする。刀剣や銃器などの製造技術を開発する金属加工職人などの存在も可能にするし、人の記憶を上回る記録を書き残せるほどの初期などの存在も可能にする。
『銃・病原菌・鉄』上巻 P.158-159より引用
これもまた最重要項目でしょう。
先程の「道具の保管」に続いて文明の直接の発展にも「定住→食料貯蔵」が関与していると考えて間違いなさそうです。
引用部に挙げられているだけでも
- 軍隊
- 宗教
- 文字
これらはすべて現代文明の基盤と呼んで差し支えない者たちです。
「定住生活開始→文明が発生する」というように漠然と考えがちでしたが、それを構成する要素が明確になったことで次の発展を考えられるようになりました。
ここでは直接取り上げていませんが、本書では他にも”病原菌”というテーマも持っています。病原菌が
- ヨーロッパの侵攻を助けた例
- 逆にヨーロッパを退けた例
こういった内容も読むことができますので、一度直接読んでみてください。
結論
- 文明発展の地域差は、地理的要因によるものがとても大きい。
- 『サピエンス全史』と合わせて人類史を学ぶ人は必読の書
発展を考える
地理を学びたい
『サピエンス全史』では人類の発展の歴史を知り、本書『銃・病原菌・鉄』ではその発展の基礎は「農耕生活への移行」であること、
そして、その「農耕生活への移行」の可否には「地理的要因」が大きく影響していることを学びました。
この流れで次に興味が移る対象と言えば、間違いなく”地理”でしょう。
義務教育で必ず触れる内容ではありますが、それでも本書のような少し高度な内容に触れるのであればとても知識が足りていないことを痛感しました。
そのため、まずは義務教育レベルの地理から学びなおしていこうかと思います。
(余談)大人と義務教育
地理に限らず、大人になってから「ちゃんと勉強しておけばよかった!」と思うことがとても多いです。
特に社会科科目は、問題意識をもって学んでさえいればどこまでも楽しめる科目だったことを再確認する今日この頃です。
とはいえ、今だからこそ楽しく学べているという面もありますので、それはそれで良かったかなというところです。
「ビートルズを聞いたことがない?それはこれから初めてビートルズを聴いて感動できるってことだよ。なんて羨ましいんだ」
という様な言い回しも聞いたことがあります。
これに倣って、私はこれから改めて学び、「感動して」いけたらいいなと思います。
関連する読書メモ
・『サピエンス全史』
本書の発展形ともいえる本ではないでしょうか。最後の謝辞にも本書の著者ジャレド・ダイヤモンドさんへの感謝の言葉が記されています。
「人類史」という観点から言っても間違いなく併せて読む価値のある本であることは間違いないでしょう。
・『教養としての「世界史」の読み方』
本書でも「文明の起こり」や「社会システムの発展」といった観点からの見解を知ることができます。同時に「世界史を学ぶ意味」という意味でも本書とかなり近いテーマで書きはじめられた本であると思います。
・『スマホ脳』
「人類がサバンナにいたころから脳は進化していない」「選択圧によってストレスに上手く反応できる人が生き残ってきた」という様な話も登場し、スマホとメンタル不調に関する本ではありながら「人類学」ともとても密接に関係する本だと思います。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- 選択圧
ひとこと
先述の通り特大ボリュームの本ですが、間違いなく読む価値があります。
少なくとも本書に一通り目を通したうえで自身の見解を持っておくことは間違いなく世界や歴史の見え方を変えてくれると言えます。それくらい良い一冊(上下巻なので二冊ですが)です。