言わずと知れたベストセラーですね。自己啓発本を調べたことのある方なら本書の名前を知らないという方は少ないでしょう。
本書は「アドラー心理学」の本としても有名ですが、心理学の本というより考え方を生かした哲学書のような内容となっていました。
哲人と青年の対話形式という書き方もあり大変読みやすく、新しい見方を提供してくれる本でした。
今回は『嫌われる勇気』を読んで、気になった要素を整理してみます。

- 著者
- 岸見一郎,古賀史健
- 訳者
- -
- 出版社
- ダイヤモンド社
- 発行日
- 2013年12月
この本について
どのような本か
ジャンル
心理学、哲学
テーマ
アドラーの心理学の考え方を対話形式により哲学的に変換し、それを通じて人生・幸せの捉え方を考える本
どんな人に向いているか
- アドラー心理学を実践に落とし込みたい方にはヒントになる
注目した要素
- 1
アドラー心理学
目的論、すべての悩みは「対人関係の悩み」である、共同体との関係性 - 2
対話形式による再構築
哲人と青年の対話で、「疑問に答える」ことを通して理解を促進 - 3
人生哲学への変換
「心理学」を「今をどう生きるか」という問いへ変換
所感メモ
本書を選んだ理由
ベストセラーとしてどの書店にも陳列されている本だと思います。
そのため存在はずっと知っており、読もう読もうとは思いつつも後回しになっていました。
最近「人間の認知」を調べようと思っており、それは脳科学がいいのか心理学がいいのか、といろいろ考えた結果
- 心理学
- アドラー心理学
- 嫌われる勇気
こういう流れで後回しになっていた本書をいよいよ読んでみようと思った次第です。
アドラー心理学の哲学化?
繰り返しになりますが、本書は「アドラー心理学」を取り上げた本です。
私はアドラー心理学の概要を知らず、本書で初遭遇です。
そのため、今の私にはどこまでが実際のアドラーの主張でどこからが本書の著者である岸見一郎さん、古賀史健さんの解釈なのかを見分けられないということでもあります。
その前提の上で、本書を読んで感じたこととしては
アドラー心理学を「生き方の哲学」として再構築したものなのかな?
といった感じでした。
本書で「アドラーの教え」として挙げられているものは大きく以下
- 「目的論」という考え方
- 人の悩みはすべて「対人関係の悩み」
- 「共同体感覚」
- 「自己受容」「他者信頼」「他者貢献」
このあたりになるのではないかと思います。
そして、本書の流れとしては最終的に「いま、ここ」を真剣に生きようという方向に向かっていきます。
つまりは、先ほど書いた通り「生き方の哲学」に向かっていくことになります。
- 「目的論」で過去にとらわれない生き方をする
- 他者との「競争」をやめる
- 自分と他人の「課題の分離」をする
- 「他者貢献」を目的とし、主観的な貢献感を得よう
- 「いま、ここ」を真剣に生きよう
こういったものはアドラー心理学を基に、「生き方への実践」的な内容に落とし込んだものなのではないのかと思いました。
ただただ、心理学の考え方を列挙した本であればこれほど多くの人の響くことは無かったのではないかと思います。
アドラー心理学の強烈な考え方を我々読者の言葉に変換し、その価値を教えてくれたからこその結果ではないのかという考えです。
そしてもう一つ
対話形式という書き方
アドラー心理学の考え方と、それを落とし込んだ「生き方」がとても強烈だったことに加えて、哲人と青年の「対話形式」という書き方も本書を楽しんで読める大きな要因だと思います。
このことについて、著者の古賀史健さんのあとがきを引用してみます。
シンプルかつ普遍的なアドラーの思想は、ともすれば「当たり前のこと」を語っているように映ったり、あるいは到底実現不可能な理想論を唱えているように受け取られかねないところがあります。
そこで本書では、読者の方々が抱くであろう疑問を拾い上げるべく、哲人と青年による対話篇形式を採用することにしました。
『嫌われる勇気』P.289-290より引用
私は本書の前評判として、このような対話形式で書かれているということは知っていました。
そして、
- 対話形式ってどうなんだ?
- 分かりやすくまとめてよ
- 説教臭くなるだけでは?
といった感想をもって本書を後回しにしていた部分はありました。
しかし読んでみるとこれのおかげでとても読みやすいです。
青年が自分と同じ疑問にとぶつけることもあれば、異なる意見に対して「哲人はどう答えるか?」と考えることもあります。
また、お互いが意見を交わす対話形式であるがゆえに、
- 自分はどうだろうか?
- 自分はすべきか?
といったことを自然に考える余地が生まれました。
普段から考えつつ読んではいるのですが、二人の会話を追っているという状況により「自分なら?」という問いが生まれやすくなっていると感じました。
これがこの対話篇形式の大きなメリットなのかもしれません。
発展を考える
アドラー心理学を別視点で学び直したい
本書だけで「アドラー心理学を理解した」とするのは到底無理でしょう。
また本書のあとがきの文章を引用します。古賀史健さんの文章です。
……わたしはアドラー関連の書籍を片っ端から買い漁り、夢中になって読み込んでいきました。
しかし、そこである事実に気が付きます。わたしが求めていたのは、単なる「アドラー心理学」ではなく、岸見一郎というひとりの哲学者のフィルターを通して浮かび上がってくる、いわば「岸見アドラー学」だったのだ、と。
『嫌われる勇気』P.288より引用
これが本書が生まれた直接のきっかけでもあるそうです。
アドラー自身の本から直接学んでいるわけではないので当たり前ですが、本書は「アドラー心理学」を岸見一郎さんが再構築したものであるということですね。
そのため、「アドラー心理学」についてもう少し学んでみようと思います。
それが本書の独自性を理解するための方法でもあると思っています。
アドラー自身の著書を読むか、アドラー心理学のまとめ本を読むか、考えています。何か別の本を読んだらまたメモを書いておきます。
関連する読書メモ
・『物語思考』
やりたいことを考えるうえで、「今までの人生がこうだったから、未来のこうなるだろう」という様な考え方をせず未来に目を向けよう、という考え方がこの本の中心であるとされています。「原因論」と「目的論」の話からこの内容を連想しました。直接意識しているわけではないかもしれませんが、間接的に影響は受けている可能性があると思ます。
・『14歳からの社会学』
本書ではまず社会からの「承認」が得られてこそ、失敗を恐れず試行錯誤ができるのだ、という主張がされています。本書のアドラー心理学とは真逆の考え方に感じられとても興味深いです。ただ、自伝的な本であるがゆえにこの主張が「社会学の考え方」なのか「著者の見解」なのか判断しづらいのが欠点です。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- アドラー心理学
ひとこと
非常に強烈であるとともに、世の自己啓発本で時々目にする主張と似通っている部分もあり、あとがきで「シンプルかつ普遍的」と称されている理由がわかるような気がしました。
また、哲人との対話を終え、哲人の家を出て新たな一歩を踏み出す青年の挿絵がとても好きです。これも対話形式で物語が存在するからこそですね。