「人間の認知」を考える中で本書を読みました。
本書では、人間が下す判断は時として不合理であり、その不合理さは「予想どおりに不合理である」という考え方を提示してくれます。
また、同時に行動経済学への導入になってくれる本でもありました。
ここでは、『予想どおりに不合理』を読んで、目に留まった要素を整理してみます。

- 著者
- ダン・アリエリー
- 訳者
- 熊谷淳子
- 出版社
- 早川書房
- 発行日
- 2014年4月30日
この本について
どのような本か
ジャンル
行動経済学、心理学
テーマ
実験を通して人間の「不合理な判断」のパターンを推測し、「予想通りに不合理」であることを調べる
どんな人に向いているか
- 行動経済学に興味を持った人なら楽しく読めるかも
注目した要素
- 1
人間は合理的な判断をするわけではない
意思決定や倫理観なども身近な環境の影響を受けてしまう - 2
不合理性にはパターンがあり推測できる
これが「予想どおりに不合理」であること - 3
経済学の”合理的な人”という仮説は現実と異なる
従来の経済学にある”経済人”と、現実の人間の行動はかなり異なる
所感メモ
本書を選んだ理由
現在私は、「人間の認知」について調べており、その関係で人間の下す不合理な判断についての内容を期待して本書を手に取りました。
また、以前読んで読みっぱなしになっている『ファスト&スロー』を捉え直すにあたり、ヒントになる内容があるのではないか?と思ったこともきっかけの一つです。
不合理さのパターン
人間の下す判断や行動は、合理的ではなく「不合理」であることがあるという考えが本書の中心です。
そして、伝統的経済学が持つ「人は経済的合理性に基づいて行動するはず」という仮定を疑ってかかるのが行動経済学の考え方となるようです。
本書では、いくつかの「人間の判断に影響を与えて”不合理”な意思決定をさせる要因」とそれを確かめる実験が紹介されます。例としては
- 相対性
- 「無料」による誤認
- 社会規範と市場規範
- 保有効果
- アンカリング
- プライミング
こういったものたちです。
そして、これらから見えてくる事として人の下す不合理な判断にはパターンがあり、「予想どおりに不合理」であるということです。
関連する記述を引用してみます。
(前略)わたしの考えでは、私たちは不合理なだけではく、「予想どおりに不合理」だ。つまり、不合理性はいつも同じように起こり、何度も繰り返される。消費者であれ、実業家であれ、政策立案者であれ、私たちがいかに予想どおりに不合理かを知ることは、よりよい決断をしたり、生活を改善したりするための出発点になる。
『予想どおりに不合理』P.22より引用
この考え方を基に本書の不合理な判断を誘発する要因たちを見ていくことで、いかに人間の判断が身近な環境から影響を受けた上のものであるかが分かってきます。
所有意識がもたらすもの
本書で気になった事例を書いてみます。
所有意識についての話です。”保有効果”という考え方を基に実験が展開されていますが、人は自分が所有しているモノを実際より高く評価するというものです。
所有意識は物質的なものにかぎったことではない。ものの見方にも当てはまる。政治に関することであれスポーツに関することであれ、なんらかの思想の所有権を得たら、わたしたちはどうするだろう。おそらく、大事にしすぎるほど後生大事にし、ほんとうの価値以上に高く評価するだろう。もっとありがちなのは、その思想を失うことに耐えきれず、なかなか手放せなくなることだ。その結果、残るものは何か。かたくなで柔軟性のないイデオロギーだ。
『予想どおりに不合理』P.255より引用
この所有意識が働くのがモノに限らないというのであれば、
- なかなか実行に移せない計画
- 温め続けているアイデア
こういったものにも適用されていくのではないかと思いました。
「行動起こせ」系の自己啓発本で、とにかく行動を開始することが推奨されているのもこれを見越しての事なのでしょう。
なかなか行動に移すことができず、自分の中で温め続けているとどんどん愛着が増していき、失敗してそのアイデアを失うことが怖くてたまらなくなり、結局行動できないまま終わる。
これもまた「予想どおりに不合理」だと考えれば、これが人間の性質であるとあらかじめ知っておくこと大変重要でしょう。
とにかく小さく行動開始して評価と改善を繰り返すことでそのアイデアをさっさとものにしてしまう方がいいのでしょうね。
とはいえ、それでもなかなか動き出せないのが人間の性質です。これは永遠の課題になっていきそうです。
そして、こういった内容を研究しているという行動経済学は、ある意味では「人間あるある」のような学問になるんでしょうね。
定期的に「行動経済学」系の本がベストセラーとして取り上げられているのもわかるような気がしました。
発展を考える
行動経済学を学んでみる
本書もまた「行動経済学」の本でした。とはいえ、どちらかと言えば実験・検証を中心とした事例集のような性格の本ではないかと思います。
そのため、もう少し行動経済学について体系立ててまとめられている本を読んでみたいと思いました。
同時に、先述の通り以前読んでいまいち腹落ちせずに放置してしまっている『ファスト&スロー』にも改めて挑戦してみようかと思いました。
話の展開と言い、扱う内容と言い本書とかなり似た本でしたので、併せて読めば以前は見えなかった骨格がつかめないかな、と思っています。
どちらにしても、「保有効果」「アンカリング」「プライミング」など、心理学・行動経済学で出てくるような言葉がわかるとかなり視野が広がるような気がしますね。
これらの言葉も一度まとめて自分の言葉としてまとめてみたいと思いました。
関連する読書メモ
・『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』
本書で紹介されている、身近な環境が意思決定は価値観に影響を及ぼすという「文脈効果」を、読解力という観点から述べている。。。ともとれる本だと思いました。直接のつながりは無いかもしれませんが、「人間の認知」を考えるうえで合わせて読む価値はあると思います。
・『歴史とは何か』
これもまた「歴史はそれを書き記した歴史家の解釈の影響を受ける」という様な内容を持った本です。経済学とは直接関係ありませんが、本書と接続できる部分は多いと思いました。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- 経済人
- 文脈効果
ひとこと
大学教授の著者が学生を中心に実施した「実験」を中心に書かれているため、とても楽しく読みやすい本でした。
私はタイトルにばっちり書いてある「行動経済学」という文字が見えず、「人間の認知に関する本」位の認識で手に取りましたが、行動経済学に興味を持つきっかけになったと言えそうです。