「定住」について調査する一環として、一時期話題になった「ノマドワーカー」という人多たちの考え方を知りたく思い、本書を読みました。
ただ、本書ではインターネットでの情報発信で稼ぐ方法が中心であり、世のノマドワーカーが「何を求め、何を評価し、何に価値を感じているか」といった内容はあまりみることができませんでした。
今回は”稼ぎ方”一旦は置いておいて(もちろん著者の様に稼げたらうれしいですが)、今回は『ノマドワーカーという生き方』を読んで、ノマドワーカーの価値観を拾えないか?という観点から考えてみます。

- 著者
- 立花岳志
- 訳者
- -
- 出版社
- 東洋経済新報社
- 発行日
- 2012年6月1日
この本について
どのような本か
ジャンル
ビジネス、自己啓発
テーマ
著者の働き方を通して、会社に依存せず時間や場所に縛られない「ノマドワーカー」という労働形態を紹介する
どんな人に向いているか
- 2000~2010年代初頭のフリーランスの実態を知りたい人にはヒントになるかも
注目した要素
- 1
「会社に拘束されない」という意味での”ノマド”
会社に時間度場所を縛られないことをメリットに感じている - 2
マイホームや定住を”足かせ”と感じている
バブル崩壊、震災、原発事故で定住はリスクを持つ - 3
自分の腕で稼ぐことへ自信を持っている
能力資本、雇用への不信感からの影響?
所感メモ
本書を選んだ理由
現在私は「移動」や「定住が人類に与えた影響」を調査しており、その過程で
そういえば現代で「ノマド」を名乗っている連中がいたよな…
と思い立ち、「ノマド」や「ノマドワーカー」と検索した結果として本書を知り読むことにしました。
目的としては冒頭に書いた通りですが、現代で「ノマド」と自称する方たちが「何を求め、何を評価し、何に価値を感じているか」を知ることです。
「ノマド」の本ではなかった…でも
結論として、本書において「ノマド」はただのラベルでしかなかったようで、あまり主題として取り上げられてはいませんでした。
とはいえ、著者の会社からの独立の経緯についての記述や、現在の生活をどう捉えているかといった内容からうかがい知ることはできました。
少し記述を引用してみます。
ぼくはオフィスを持ちません。その必要性をまったく感じないからです。インターネットの電波さえあれば、日本中、いえ世界中どこにいても仕事を続けることができますし、先進国であればどこにいても電波に困ることはありません。
僕のような生き方、働き方を「ノマド」「ノマドワーカー」と呼ぶようです。ノマドとはもともと「遊牧民」という意味です。オフィスを持たず自由に場所を変えながら仕事をする僕は、まさにノマドです。
『ノマドワーカーという生き方』P.3-4より引用
「移動」そのものというよりは、「移動という選択肢」があることを重要視しているように感じられます。
これ以降も
- 自由なスケジュールの設定
- カフェで仕事
- Apple製品推し
といった「いかにも」な説明がなされています。
本書におけるノマドとは「遊牧生活」というよりは「制度的・契約的な流動性を持てる生活」という面で捉えられていることが分かります。
また、こういった生き方に至った経緯としてバブル崩壊による両親の不動産投資の失敗もかなり影響しているようです。
また、もう一点価値観を知るうえで重要と考える記述を引用してみます。
就職したら必死に働いて同僚より先に出世をし、結婚したら郊外に家を買ってそこで子供を作り、住宅ローンを返済するためにますます一生懸命働く。このような生き方は、会社が安定して存続し続け自分も雇用され続ける事が大前提でしたが、もはやそのような生活は難しくなってきています。
そこに追い打ちをかけたのが、原発事故だったことは言うまでもありません。
会社に勤めることは、土地に縛られることを意味します。今までは「安心」「安全」の象徴だったマイホームが、その土地に自分と家族を縛る「足かせ」になってしまってしまうこともあるのだと、我々は気づかされたのです。
『ノマドワーカーという生き方』P.244-245より引用
- 終身雇用の崩壊(を予期)
- バブル崩壊
- 原発事故
このような経験を持って著者の中で「自分の力で稼がないと」という思いが育っていったのでしょう。現代ノマドもまた、生まれ育った環境の影響により「そうせざるを得なかった」という様な側面もあるのかもしれません。
現代で「ノマド」を名乗る人たちは、少なからずこうして”旧来のサラリーマン”的な人生のステレオタイプに「生きづらさ」を感じた人たちではあるのでしょうね。
著者の「人間関係」への見方
著者の人間関係に対する考え方もヒントになるかもしれません。
僕は独立志向が強く一匹狼的な生き方を好む傾向にあるので、「面倒見の良い上司」がうまく務まりませんでした。部下の気持ちがわからないのです。
『ノマドワーカーという生き方』P.28より引用
そしてもう一か所
学生の部活にちょっと似た感覚かもしれません。お金のためでも生活のためでもなく、でも一つのものに向かって皆で力を合わせてイベントを作っていくという作業が、一体感と達成感を強めるものだと思っています。
『ノマドワーカーという生き方』P.107より引用
本書では紙面の大半を「オフ会」「人脈づくり」「人間関係の拡張」といった、いかにも2010年代といった内容が占めています。
半面、会社員時代は「面倒見の良い上司」が務まらず退職を決意していくこととなる。
ということは、著者は
- 上下関係(ヒエラルキー社会)を嫌い
- 横のつながり(ネットワーク社会)を好む
こういう性質の方のようです。
そして、この性質はその他の「現代ノマド」の方にも共通するのではないかと思いました。
今後ももう少し「現代ノマド」につい手も調査する予定ですが、「その人が好む人間関係のタイプ」も注目してみたいです。
発展を考える
もう少し「移動」に振った本はない?
先程の書いた通り、私は本書に現代社会を舞台に「ノマド」を名乗る人々の価値観を探ろうとしてきました。
本書でも「場所に縛られない」という記述は登場するものの、どちらかというと「収益形態」についての記述が中心です。
当初の目的が「移動」や「定住が人に与える影響」に関する調査である以上、もう少し「移動に振った本」を読みたいなと思いました。
もちろん現代における「ノマド」は”働く場所”の話なんだよ、と言われればそれで納得せざるを得ないわけではありますが、もう少し調査を進めてみたいと思います。
関連する読書メモ
・『移動する人はうまくいく』
ある意味では本書の発展形と言えるかもしれません。「環境が変わることで眠っていた能力が目覚める」「様々な経験を積める」といったような”移動礼賛”の親玉のような本ですね。私もかなり心を動かされました。ただし、客観性には欠ける本ですので付き合い方には要注意です。
・『移動と階級』
「移動」を専門に取り上げた本で大変勉強になります。本書にもこの本のような成分を期待していましたが…。また、この本でも「ノマド」について触れられています。ただ、どちらかと言えば「恐慌で職を失い”ノマド”にならざるを得なかった」方々への言及です。これもまた現代ノマドの一つの形として知る価値があると思います。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- ノマド(現代)
- ノマド(遊牧民)
ひとこと
出版から10年以上が経過しているため、”稼ぎかた”を学ぶ本として捉えるのは古いと思います。今でも通用する部分はあると思いますが、現在はもっと時代に合った本があるでしょう。
しかし、2000~2010年代初頭を生きたフリーランスの実録資料としてはなかなか価値があるのではないかと思いました。そういう見方の方でも楽しめるかもしれません。