何気なく手に取りましたが、「クジラを取り巻く社会情勢」を知ることができる大変刺激的な本でした。
最近は、世界から日本に対して「捕鯨を取りやめるべき」という声が上がっているというニュースを耳に数ることは多いです。
「なぜそうまでして捕鯨をする必要があるんだ?」と思っている方もいるのではないでしょうか?
本書に答えがあるとは言いません。ただ、この問題について考える上での重要なヒントとなる本だと思いました。
今回は『クジラから世界を考える』を読んで、気になった要素を残しておきます。

- 著者
- 倉澤七生
- 訳者
- -
- 出版社
- 集英社インターナショナル
- 発行日
- 2026年02月06日
この本について
どのような本か
ジャンル
社会
テーマ
「環境汚染」「捕鯨」「保護」といった鯨類(クジラ・イルカ等)を取り巻く社会情勢について考える
どんな人に向いているか
- クジラと人間の関係を知りたい方
- 「捕鯨」について関心を持った方
注目した要素
- 1
「産業としての捕鯨」を残したい日本
日本は”調査”、”文化”、”科学”といった主張をしつつも、鯨肉から得られる利益を守ろうとしている側面も強い - 2
イルカ、シャチ等鯨類の展示は減少傾向
世界ではイルカ、シャチの娯楽目的での飼育には抗議が起こっている。イルカショーも終了傾向 - 3
ブルーコリドー
クジラの生息域をつなぐ移動経路。また、これについて研究する研究機関
所感メモ
本書を選んだ理由
特に目的があったわけではなく、書店で目に付いたため特に内容も確認せずに購入しました。
クジラをモチーフとした芸術作品が好きだったため、帯のクジラの絵に反応しただけだったかもしれません。
捕鯨については今は書けない
本書を読んで一番印象に残ったのは「捕鯨」についてでした。
本当はこのブログにも捕鯨について書こうかとも思っていましたが、今の私にはあまりにも知らないことが多すぎるテーマでした。言及するのはもう少し客観的に情報を見られるようになってからにします。
そのため、上記「注目した要素1」で触れるのみとしておきます。
イルカと命の尊さ
さて、もう一つ本書で印象に残った内容です。
これまた私は全く知りませんでしたが、世界ではイルカやシャチ等鯨類の娯楽目的での飼育に抗議する運動が起こっており、実際にイルカショーなどは廃止されていく傾向にあるようです。
「実際に生き物と触れ合う機会があったほうがいいのでは?」と私も考えてしまいましたが、これは日本の価値観に染まって育ったが故なのでしょうか?
ひとつ印象に残った著者の見解を引用してみます。
イルカは「高い能力と特性」を理解することが、イルカの飼育を正当化するとの主張に、私は賛成することができません。高い能力を有する水族館のイルカが「命の尊さを認識」するきっかけになるとされているのなら、当のイルカたちは、水族館に連れて来られるとき、それまで強い絆で結ばれた他のイルカたちと離れ離れにされ、一緒に生活してきたイルカたちのなかには、殺されるものさえいることを知る必要があります。
『クジラから世界を考える』P.194より引用
もう一度書きますが、あくまで「著者の見解」ではあります。
しかし、絶対に無視してはいけない見解でもあると思い残しておきます。
イルカやクジラに限らず、
- 動物を飼育する意味
- 娯楽目的に利用する意味
- 家畜という存在について
- 保護される動物とされない動物
など考えていかなければならないでしょう。難しい問題ですが、避けては通れない、避けてはいけない内容であると思います。
ブルーコリドー
「ブルーコリドー(青い回廊)」という言葉を聞いたことがある方はいるでしょうか?
私は全く知らず、本書を読んで初めて目にしました。
クジラは各海域を移動しながら生活するわけであり、その生息域をつなぐ移動経路のことを「ブルーコリドー」と呼ぶのだそうです。
また、同名の研究プロジェクトが存在し、そのWebサイトではクジラの移動経路が紹介されています。
そして、クジラが繁殖してくためには、このブルーコリドーを安全に通過できるように保護していくことが重要とされています。
ただし、本書では以下のような指摘もありました。
(前略)残念ながら、日本沿岸は空白のままなので、今後日本の研究者も参加して、日本海域でのクジラの移動も明らかにしてほしいものです。
『クジラから世界を考える』P.262より引用
実際にWEBサイトを確認してみてください。
これを書いている2026/3現在、言及されている通り日本沿岸は完全に空白になっていますね。

そもそも日本ではこの「ブルーコリドー」が全く認知されていないのかもしれません。
本書で紹介されたことをきっかけに日本でも研究がされていくのでしょうか?今後も注目してみたいところです。
発展を考える
クジラ問題を考え続けたい
まず、前提として本書はかなり「捕鯨反対派」としての意見が強く現れており、少なからず「客観的ではないな」と思ってしまう様な記述もありました。
よって、本書を読んだだけでは、クジラを取り巻く「海洋汚染」「捕鯨の是非」といった問題を論じるには明らかに情報が足りないでしょう。
ただし、どの問題も絶対にこのまま素通りしてはいけないと強く感じます。
そのため、クジラ問題を最低限論じられるように、自分の意見を持てるように情報収集を継続していきたいと思います。
当面の調査課題としては
- IWCの考え方
- クジラの生物的特徴
- クジラの生息数の推移
- 捕鯨の実態
- 文化としての捕鯨
- 人類と種の絶滅
これらでしょうか。
調べていく内に課題は増えていくことが予想されますが、何かしら自分の意見を持てるようにはなっておきたいです。
関連する読書メモ
今回は考えるヒントになりそうな内容を持った本を少し多めに載せてみます。
本書の影響を受けて若干「捕鯨反対派」に寄った選定になっているとは思いますが…
・『バカロレアの哲学』
内容自体は本書とは全くこれっぽっちも関係ありません。ただ、「フランスでは”市民”が社会の問題に対して自分の意見を持てるよう、”思考の型”としての哲学を必修科目としている」という内容です。まさに今回のような場合に有効なのではないでしょうか?
・『銃・病原菌・鉄』
この本に限らず有名な話ではありますが、「人類がオーストラリアに渡った時期を境に、オーストラリアから大型哺乳類が姿を消した」という内容が登場します。人類による狩猟が直接の原因なのかは不明です。しかし、捕鯨について考える際にヒントになるかもしれません。
・『予想通りに不合理』
日本が「産業としての捕鯨を残そうとしている」という主張を読んでからどうしてもこの言葉が浮かんでしまいます。「保有効果」ですね。「自分が持っているものを実際より高く評価する」日本はまさにこれに陥っているのかもしれません。
・『大量絶滅はなぜ起きるのか』
生物保護の話となると、どうしても”絶滅”という言葉が頭をよぎります。この本では地球の歴史上5回起こった大量絶滅の4番目「三畳紀末の絶滅」について考察されていきます。また、「現代で大量絶滅が始まっているのか?」といった問題にも著者の見解が示されます。参考になるでしょう。
・『脳は世界をどう見ているのか』
この本では人間には「古い脳」と「新しい脳」があるとされています。「古い脳」は遺伝子保存のため「新しい脳」の理性を押しのける場合があります。また、「新しい脳」も「宗教への妄信」や「気候変動は脅威ではない」といった「誤った信念」に騙されてしまうことがあります。では、今回の問題はどういった対立構造になっているでしょうか?
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- IWC
- 調査捕鯨
- ブルーコリドー
ひとこと
非常に難しい問題を扱った本でしたが、今後も考え続けていきたいです。
ちなみに、本の内容とは一切関係ないですが…
インターナショナル新書の本を今回初めて読んだのですが、ページ数の割に手に持った時に軽く感じました。重さが気にならないので非常に読みやすくていいですね!
「軽くて持ちやすいから」というわけではないですが、他にも何かいい本が無いか探してみようと思います。