その山を見上げて

読書と思考を積み上げていきます。

『教養としての数学史』──「数学」で見た世界史の本

たまには「数学」について知りたくなり、偶然目についた本書を読みました。

難しい解説はほとんど排除されており、主に数学者の人生や社会にもたらした影響などを中心に書かれており、歴史の本としても面白いです。

今回は『教養としての数学史』を読んで、気になった要素を残しておきます。

書籍情報
『教養としての数学史』の書影
『教養としての数学史』
著者
Fukusuke
訳者
-
出版社
かんき出版
発行日
2025年6月11日
※書影は出版社公式サイトより引用
目次

この本について

どのような本か

ジャンル

歴史、数学

テーマ

「数学」が社会を動かしてきた歴史を知り、身近について考える

どんな人に向いているか

  • 数学が苦手だった人
  • 世界史が好きな人

注目した要素

  1. 1

    数学を取り入れて成功した分野
    軍事、商業、保険、衛生、経済など多数

  2. 2

    数字は嘘をつかないが嘘つきは数字を使う
    選挙の不正検出に使われる法則

  3. 3

    ナイチンゲールと統計
    政府を動かすため統計の力を使った

所感メモ

本書を選んだ理由

今まではどちらかというと概念的、哲学的な本を中心に読んできていたため、少しずつ自然科学や数学といった数理的か内容にも触れていきたいと思っていました。

最近歴史の本をよく読んでいたこともあり、その足掛かりとして「数学史」というのはピッタリではないかと思い本書を読みました。

統計学の話

本書で面白かった内容その1です。

ナイチンゲールが統計の力を使って政府に自分の主張を通した話となってしました。

正直なところ、名前は知っていても何をした人なのか、恥ずかしながら今まで知らずに来てしまっていました。折角なのでここで学んでおきます。

  • 1854年10月にクリミア戦争中のユスキュダルに派遣される
  • 病院が不衛生な状況であり、死亡率が高かった
  • 病院の衛生環境が原因であると見抜く
  • 衛生上状態を改善することで死亡率を下げる

 ナイチンゲールはクリミア戦争での死亡率のデータを数値でまとめた。

 しかし、政府の役人は数字に疎く、結果として彼らの心には響かなかった。

 どうしたら政府の役人を動かせるか。

 悩むナイチンゲールを照らしたランプは「統計学」だった。

 早速、政府の役人に野戦病院でも環境の劣悪さを理解してもらうため、彼女はグラフを作成する。このグラフは「鶏のとさか」とも呼ばれている。

『教養としての数学史』P.130より引用

このように情報を集め、統計的に処理して政府に示し続けたことにより、最終的に主張が受け入れられ、軍の衛生環境の改善が行われたとのことです。

この流れは現代でも全く同じですね。

何かを要望するときに感情に訴えかけるような文学的な主張をするのではなく、数字の力を使って論理武装した話の持って生き方をしないと人は動かせませんね。

これは事例としてとても面白いと思ます。やはり、どんなに拙くても統計的なものの見方や基本的な使い方は身に着けておきたいです。

ベンフォードの法則

もう一つ、締め方が面白かったお話です。

例によって私は全く知りませんでしたが、選挙絡みの統計で用いられる「ベンフォードの法則」というものがあるそうです。

自然界に出てくる多くの数値の最高位の数字は次のような確率に従う。

 1:30.1% 2:17.6% 3:12.5%

 4:9.7%   5:7.9%   6:6.7%

 7:5.8%   8:5.1%   9:4.6%

『教養としての数学史』P.162より引用

自然界に出てくる数字は「1」からはじまることが多いということですね。

これが選挙での不正の検出に使われているらしく、選挙区ごとの得票数の最高位の数字の分布が上記のようになっていないと「票数の操作をしているのでは?」と疑われてしまうことがあるようです。

2020年のアメリカ大統領選挙にて、トランプ陣営がこれを根拠にバイデン陣営の不正を訴え、調査が行われたこともあるということです。

 選挙のような政治が絡む統計においては、ベンフォードの法則に従わなければ疑われ、従いすぎていても疑惑を招いてしまうという状態に陥っている。

 実際に不正が発覚した事例はほとんどなく、専門家たちはベンフォードの法則の限界を示している。それでもなおこの法則は、不正検出の第一歩を担い、より詳細な調査を求める足がかかりとして機能している。

『教養としての数学史』P.172-173より引用

こういった法則も覚えていれば何かのヒントにはなるのかもしれませんね。

また、今後何か大量のデータを見る機会があれば最高位の数値の統計を取ってみるのも面白いかもしれないと思いました。

発展を考える

数理的に考える習慣をつけたい

何とは言いませんが、仕事柄数字に触れる機会は多い方だと思っています。

とはいえ、それはあくまで分かり切った範囲内で利用するだけに留まっており、「データで考えている」「データを利用している」とは言い難い状況です。

ナイチンゲールの統計学の話ではないですが、情報はただ持っていても何にもならない場合が多いです。

適切にデータを加工・分析する能力は絶対に必要でしょう。

また、そうでなくても普段から「体感」「直観」「空気」ではなく、数理的に物事を考える・見る癖をつけていきたいですね。

関連する読書メモ

・『教養としての「ローマ史」の読み方』

この本では「古代の時間軸としてもローマ史が役に立つはず」という様な考えが示されていたように思います。本ブログでは取り上げていませんが「数学史」でもアルキメデスの話題として、ローマ・カルタゴ間のポエニ戦争、シラクサといった、ワードが出て来ています。そういう機会があると「お?」と思えますね。

また、「教養としての○○」と書名がそっくりで、最初は同シリーズなのかと思っていましたが、出版社も著者も違うため無関係なようです。

bookandthink.com

・『「原因と結果」の経済学』

この本を読んだ時も「確率・統計といった内容に慣れておきたいな」と思いました。やはり、数字を適切に見られるようになる技術は現代を生きる中では必須でしょう。

bookandthink.com

気になった言葉

後日調査したらリンクを追加予定です。

  • ナイチンゲール

ひとこと

数学の本というよりは歴史の本という様な成分の方が強い本でした。

そのため数学に苦手意識のある人でも読みやすいと思います。こういった本を橋渡しに少しずつ数学的な内容にも触れていけるようになると良いかもしれません。