その山を見上げて

読書と思考を積み上げていきます。

『平成史講義』──平成を振り返る講義

「平成」の流れを改めて捉え直すため、本書を読みました。

本書では「政治」「経済」「雇用」「メディア」「貧困」など、計10講の平成についての講義が掲載委されていました。

今回は『平成史講義』を読んで、目に留まった要素を整理してみます。

書籍情報
『平成史講義』の書影
『平成史講義』
著者
吉見俊哉
訳者
-
出版社
筑摩書房
発行日
2019年02月05日
※書影は出版社公式サイトより引用
目次

この本について

どのような本か

ジャンル

社会

テーマ

政治、経済、雇用、メディアなど10の視点から平成を振り返る

どんな人に向いているか

  • 「平成」に対する研究者の分析が読みたい人

注目した要素

  1. 1

    バブル崩壊
    学校から仕事への移行に困窮した「就職氷河期」世代

  2. 2

    情報接触のカスタマイズ化
    メディアの多様化により、社会全体の「共通認識」のような情報からは遠ざかった

  3. 3

    新時代の「日本的経営」
    長期蓄積能力活用型、高度専門能力活用型、雇用柔軟型の3つに分かれる

所感メモ

本書を選んだ理由

自分と異なる世代の方々がどういった社会情勢の中で生きてきたのか、社会の流れをつかんでおきたいと思いました。

現在の大半の人間が通過してきた「平成」について知る必要があると考え、大枠を掴めそうな本書を選びました。

バブル崩壊と雇用

やはり平成初期は「バブル」の影響に関する内容は避けて通れないでしょう。

「バブル」の要約として押さえておきたい記述がありましたので引用してみます。

(前略)日銀は、円高抑制と景気浮揚を狙って低金利政策を取ったので、企業からすれば苦労してされに生産性を上げたり、産業構造を転換するよりも、低金利で借金をして土地や株、海外資産に投資するほうが利潤追求の合理的な方法となっていた。

『平成史講義』P.283より引用

こうしてバブルが発生するわけですが、他国のに投資して自分たちの企業活動を疎かにしていく構図になっているため、いずれ崩壊します。

そして、当然そのバブル崩壊の影響を受けた日本企業には雇用能力が低下し、この年代に就職を希望していた世代に大きな影響を与えることになりますね。

 しかし、バブル景気が崩壊したのち、経済の低迷とバブル期の新卒過剰採用、中高年齢層に達した団塊世代の人件費負担、後発諸国の経済的台頭などの複数の要因により、九〇年代から今世紀初頭にかけての日本企業は、新規学卒者を正社員として採用する余力を著しく低下させていた。その結果生じた「就職氷河期」や「ロストジェネレーション」の直接の対象となっていたのが、折しも二〇代の年齢層であった団塊ジュニア世代である。

『平成史講義』P.134より引用

バブル崩壊後の要約としてはこちらの文章が適切だと思いました。

各世代が体験してきた流れを押さえることが目的ですので、今後さらに前後の出来事を補完できるように進めていきます。

情報接触のカスタマイズ化

本書では「メディア」についての講義も収録されており、政治経済から少し離れた内容にも触れられましたので気になったものを残しておきます。

  • 新聞:1997年に発行部数ピークを迎え、それ以降減少傾向
  • テレビ:1989年~ 有料放送誕生、スカイポート事件、2003年~ 地上デジタル放送開始、2015年 TVer
  • インターネット:1995年 インターネット元年、NTTドコモ iモード、2015年 動画配信元年、Netflix・Amazon Prime Video等開始

簡単に並べただけですが、テレビ→インターネットへの流れは既に懐かしく感じる量気に達しつつありますね。

同時に2011年頃からのスマートフォンの本格普及によるSNSの発達なども平成後期の特徴になるでしょう。

そして、こうしたメディアの多様化によって「情報接触のカスタマイズ化」が起こり始めたとされています。

これに対する記述を引用してみます。

 他方で、それらの新たなメディアが普及・発達する中で問題となってきたのが、情報接触のカスタマイズ化である。メディア利用者は、自らが好む情報のみを選択し、自らに直接関係ないけれども、同じ社会で生活するのなら共通認識として知っておくべきという情報からは、遠ざかる傾向が強まっている。

 このようなメディア接触の変化は、メディアの社会統合の機能を後退させ、逆に、社会の分断化を促進する局面すら増えてきたと言える。

『平成史講義』P.183より引用

これはかなり身近な問題だと思います。

特にインターネットの発達によって「見たいものしか見ない」がますます加速していることは自分自身のことを思い出しても思い当たる部分があります。

また、これがビジネスも絡んでくるためさらに厄介ですね。

You Tube等のプラットフォームにしても、顧客を引き付けるため顧客の関心を強く引く情報のみを選別して勧めるアルゴリズムが組まれており、有益な情報、必要な情報がお勧めすらされないという話はよく耳にします。

どのくらいの年齢でこの状況にぶち当たったかは、世代間の価値観の形成にかなり影響を及ぼしているのではないかと思いました。

発展を考える

氷河期世代について調べる

「平成を生きた世代」と一口に言ってもよく耳にするものだけでも

  • 氷河期世代(ロスジェネ世代)
  • ゆとり世代
  • Z世代

等々いろいろありますが、後ろ2つはまだ分権で調査をするにはデータが不足しているかと思いますので、まずは「氷河期世代」について調べていきたいと思います。

そもそも世代ごとの価値観の違いを知ることが目的ですので、大枠の流れを押さえたら次は順番に世代ごとに調べていくのが王道でしょう。

氷河期世代であれば既に50代に差し掛かっており、世代動向を探るためのデータが十分に溜まってきているのではないでしょうか?

関連する読書メモ

・『平成金融史』

今回と同じテーマで「平成の金融史」についての本も読みました。平成はバブルの絶頂期→崩壊から始まりますので、金融関連の動向は避けて通れないでしょう。そして、その時代を生きる人に密接に結びつく「経済」「雇用」に直接影響する内容ですので別口で押さえておくといいと思います。

bookandthink.com

・『歴史とは何か』

内容とは直接関係ありませんが、こういった歴史(というにはまだ新しすぎますが)を分権で学ぶのであれば必ず押さえておきたい内容です。「歴史はそれを書き残した歴史家の価値観が入り込む」という事実は念頭に置いて読む必要があります。

bookandthink.com

・『スマホ脳』

平成に爆発的に普及して、金融にしても行政にしても我々の生活と完全に結びついてしまったスマホ。SNSの普及も併せて人間に与えた影響はとても大きいです。時間軸の把握と合わせて押さえておきたい内容です。

bookandthink.com

気になった言葉

後日調査したらリンクを追加予定です。

  • 就職氷河期
  • バブル

ひとこと

もう少し平成の歴史を通して振り返るような本かと思って買いましたが、9人の研究者がそれぞれのテーマに沿って平成について述べる講義のまとめ本でした。

著者によってはかなり思想が強く前面に出て来ている講義もあり、「歴史の大枠を振り返る」という目的からは若干外れていたかもしれません。

また、どうしても「政治」「経済」「雇用」といった堅いテーマに偏りがちになってしまっているため、「文化」「流行」などのテーマから通して平成を振り返る本も探していきたいです。