その山を見上げて

読書と思考を積み上げていきます。

『就職氷河期世代』──氷河期世代に対する通説の検証

現代を生きる各世代が生きてきた時代を知る一環として本書を読みました。

学校卒業→就職の時点で躓くこととなってしまった氷河期世代に対する世間の通説を、統計データから見直す本となっています。

ここでは『就職氷河期世代』を読んで、目に留まった要素を整理してみます。

書籍情報
『就職氷河期世代 データで読み解く所得・家族形成・格差』の書影
『就職氷河期世代 データで読み解く所得・家族形成・格差』
著者
近藤絢子
訳者
-
出版社
中央公論新社(中公新書)
発行日
2024年10月21日
※書影は出版社公式サイトより引用
目次

この本について

どのような本か

ジャンル

社会

テーマ

「氷河期世代」に対する通説を統計データを通して検証する

どんな人に向いているか

  • 氷河期世代問題を考えたい方

注目した要素

  1. 1

    氷河期世代は前期後期に分けられる
    前期:93-98年卒、後期:99-04年卒

  2. 2

    雇用が不安定
    バブル世代と比べて年収が低く、年収格差は15

  3. 3

    世代内格差が拡大
    所得分布階層の所得がさらに下がり、格差拡大

所感メモ

本書を選んだ理由

自分と異なる世代の方々がどういった社会情勢の中で生きてきたのか、社会の流れをつかんでおきたいと思いました。

その「世代」の中でデータがたまりつつある「氷河期世代」について、データで実態を振り返れると思い本書を選びました。

就職氷河期世代について

就職での苦戦

就職氷河期世代は、学校卒業→就職活動の時期にバブル崩壊の影響を直接受け、出鼻をくじかれて以降の人生に影を落とすことになった世代と言えそうです。

団塊の世代を親として持ち、バブルの真っただ中を育ったため「未来は明るい」と聞きながら育ったにもかかわらず、いざ就職するとなったときにはバブル崩壊直後、ということで精神的にも影響が大きかったのではとされていました。

また、データから見た氷河期世代の雇用について

(前略)就職氷河期世代の初職はその上の世代に比べて、製造業が少なくサービス業が多く、大企業が少なく、3年以内の離職率が高いという傾向は、2016年に大卒者のみを対象に連合総研が行ったアンケート調査など、他調査でも確認されている。就職氷河期世代は、少なくともすぐ上のバブル世代と比べて、卒業直後に比較的条件の悪い仕事に就くことが多かったのは間違いない。

『就職氷河期世代』P.32より引用

この辺りは漠然と持っているイメージと一致しそうです。

ただ、本書のデータを見る限りはあくまで「傾向」であり、人によって影響の大小はあるでしょうか、世代全員がそうだったわけではない。

当たり前のことですが、見失わないようにしたいです。

家族構成

もう一つ、低所得に連動する要素として

  • 未婚化・晩婚化
  • 少子化

こういったものもよく上げられるかと思います。

ただ、本書によれば少子化(平均出生児数の減少)自体は氷河期世代よりも上の世代から始まっており、むしろ氷河期後期世代は上の前期世代よりも多く子どもを産んでいるようです。

 それでも、若年雇用の悪化が未婚化や少子化を加速させている、という声は根強い。確かに、雇用が不安定だといつまでたっても結婚できないとか、経済的な余裕がなくて子供を育てることができないというのは、実感として理解できる気はする。また、2000年代に出版されたルポルタージュを読むと、取材対象となった就職氷河期世代が「今の収入では結婚は考えられない」などと発言する場面にしばしば遭遇する。

 実際、個人レベルで見ると、若年気に不安定な雇用状況にあった人のほうが、将来結婚をせず子供も持たない確率が高い。しかし、こうした個人レベルの差は同年代のなかの差であり、世代全体でみると、必ずしも、若年期の雇用状況が悪かった世代ほど未婚率が高いわけでも、子供の数が少ないわけでもないのだ。

『就職氷河期世代』P.53-54より引用

ここは少し意外な点でした。おそらく、実際に「氷河期世代」に該当する方々でもここを誤解している場合があるのではないでしょうか?

私も世間でも通説通り、「少子化」と「バブル崩壊による不景気」、「就職氷河期」を結び付けて考えてしまっている節はありましたので、特にそうした事実はないとここで押さえておきたいです。

このように通説と実際のデータが食い違っている、という事例は多いのでしょうね。

発展を考える

氷河期世代への補助?

ここまでで見てきた通り、あくまで傾向ではありつつも氷河期世代は

  • 不安定な雇用
  • 所得格差の拡大
  • 結婚確立や子供の数の減少

は見られていることとなります。

そして、所得が低く、老後に支援を頼める子供のいない氷河期世代が高齢層に到達した後の支援が昨今も問題視されています。

 就職氷河期世代はすでに中高年であり、20代、30代の時期に失われた就業機会について、今から取り返すことは難しい。無論、すでに行われている各種の就労支援を継続し、能力開発の機会を提供したり、非正規雇用者の正社員登用を促進したりすることによって、今後さらに傷が広がることを防ぐ努力は必要である。しかし、2003年の「若者自立・挑戦プラン」にはじまり、近年の「就職氷河期世代支援プログラム」に至るまで、過去20年にわたって様々な施策が行われてきたにもかかわらず、経済的に親に依存する未婚の低所得者や社会的に孤立傾向にある無業者の増加は防ぎきれなかった。

『就職氷河期世代』P.161より引用

こういった状況であるため、今後ますます氷河期世代の年齢層が上がるにつれ、支援も拡充されていくことでしょう。

我々一般国民が同行できる問題ではないかもしれませんが、社会がこういう問題を抱えているということは知っておかなければいけませんね。

関連する読書メモ

・『平成金融史』

就職氷河期の引き金となったのがバブル崩壊であれば、本書でそこからの流れをある程度掴んでおくことができます。「なぜ」に該当する内容ですので、先にこの本を読んでおくのもいいと思います。

bookandthink.com

・『平成史講義』

政治、経済、雇用、メディアなど10の観点から平成についての講義が収録されている本です。氷河期世代(ロスジェネ世代)についても言及あり、一緒に読むのもいいとおもいます。

bookandthink.com

気になった言葉

後日調査したらリンクを追加予定です。

  • 少子化

ひとこと

本書は統計データから氷河期世代を振り返る本となっているので、そういった本の宿命としてどうしても「なぜ?」がさらっと触れる程度になりがちです。

文化・流行等から見た平成史の本も存在しないか合わせて調査してみたいと思います。