その山を見上げて

読書と思考を積み上げていきます。

『森が消えれば海も死ぬ』──森林があることで海の生態系がある

たびたび目にする「森林と海の生態系の関係」を知りたいと思い本書を読みました。

昔から漁師たちの間では、魚介類を増やすためには沿岸部の森林「魚つき林」を守ることが大切だという考えが存在していたようです。

今回は『森が消えれば海も死ぬ』を読んで、目に留まった要素を整理してみます。

書籍情報
『森が消えれば海も死ぬ 第2版』の書影
『森が消えれば海も死ぬ 第2版』
著者
松永勝彦
訳者
-
出版社
講談社(ブルーバックス)
発行日
2010年02月19日
※書影は出版社公式サイトより引用
目次

この本について

どのような本か

ジャンル

自然科学

テーマ

「森林」が川や海の生態系にもたらす影響について考える

どんな人に向いているか

  • 海について学びたい方
  • 森林について学びたい方

注目した要素

  1. 1

    魚つき林
    海や河川の栄養素を提供する。森林の周りには魚が集まる

  2. 2

    腐植土
    枯れ葉、枯れ枝がバクテリアや小動物によって分解されたもの。栄養素を含み、水分の蒸発を防ぐ。森林を伐採したまま放置すると雨により流出してしまう

  3. 3

    海・河川への栄養塩の供給
    陸から海や河川へ栄養塩が供給されている

所感メモ

本書を選んだ理由

以前読んだ『大量絶滅はなぜ起きるのか』にて本書への言及があり、海への土壌の流入により栄養素が供給されているという記述に興味を持ったため。

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森林と魚の関係

本書を読んで一番面白かった内容です。

「魚つき林」と言って、森林を保護することで魚介類を増やすことにつながるということを昔の漁民たちは知っていたといいます。

 一般的に魚は直射日光の当たる場所よりは木陰を好むし、水中に張り出した樹木の根や倒木の影が小魚の安全な隠れ場所になる。また、樹木が生い茂ると、そこには種々の昆虫が生育し、水面に落下するものも多い。昆虫を主食とするイワナなどは、河畔林が無いと生きていくことは困難になる。体長一〇センチメートル程度のイワナやヤマメなどの主な餌は水中の昆虫ではなく、落下昆虫である。夏には落葉樹から一平方メートル、一日当たり一〇グラムの昆虫が水面に落下している。淡水魚から逃れた昆虫は海に流れるが、結局海水魚の餌にもなり、その効果は大きい。

『森が消えれば海も死ぬ』P.46より引用

知りませんでしたが、淡水魚には木や草から落下した昆虫を捕食している種もいるようですね。本当に森林と水中の生態系とは切っても切り離せない関係にあるのだと思います。

最近は河川や海の周辺も開発が進み、木は伐採されて護岸工事が行われ完全に魚が住めるような環境ではなくなっている場合も多いと思います。

景観を重視して川沿いに木が植えられていることもありますが、そういった場合にもこのような効果は期待できるのでしょうか?

おそらく、全く無意味ではないのでしょうが、景観のために特定の種類の木だけを植えたとしても本来の森林が持っていたような魚の生育を助けるような効果は薄いのではないでしょうか?

人工的に河川の生態系を再生させた事例があるのかどうかも調べてみたいと思いました。

腐植土の役割

もう一つが、陸からの栄養素の供給についてです。こちらもまた重要な要因となっています。どちらかというと、こちらの内容を期待して本書を読み始めました。

まず、森林の周囲では枯れ葉、枯れ枝が分解され腐植土が形成されます。

 森林地帯では枯れ葉、枯れ枝が小動物やバクテリアなどによって分解され、さらに酵母による発酵や土壌での化学反応を受ける。これらが風化され微細粒子となった鉱物と混合し、いわゆる腐植土層が形成される。表層にはまだ分解されていない枯れ葉が堆積しており、腐植土からの水の蒸発を防いでいる。

『森が消えれば海も死ぬ』P.41より引用

同時に、森林が存在することにより河川や海への土砂の流入を防ぐ効果もあり、水分の蒸発を防ぐ効果と合わせて河川を守っていると言えるようです。

また、腐植土が流入することにより栄養素の供給も行われています。

 外洋に比べ光合成生物が豊富に生育する沿岸部では、外洋以上に鉄が必要とされる。では、沿岸海域の光合成生物に影響を与える鉄の供給源は何だろうか。沿岸では、先に述べた森林起源の腐食物質と結合した鉄イオンが取り込まれているのである。

(中略)

 森林の腐植土層で、フルボ酸やフミン酸と強い絆で結ばれた鉄は、河川を通して、あるいは海岸まで森林が迫っている場合には、森林地帯から直接、海に流れ込んでいるのである。

『森が消えれば海も死ぬ』P.75-76より引用

これは鉄に関する記述ではありますが、森林から河川・海への土壌の流入によって栄養素が供給されており、これが海の生態系を育むのに大切な役割を果たしているということですね。

そもそも、生命の誕生の要因として大陸から原初の海中リン、窒素、ケイ素などの栄養塩が流入したことが影響しているという内容は耳にしたことがありましたので、本当に海と陸と生命は密接につながっているのだと思いました。

発展を考える

森林再生

生物、地球といった内容に触れると必ず「人間の活動によって大気中の二酸化炭素が爆発的に増えている」という内容を目にすることになります。

特に今回は森林が海の生態系に与える影響についての本でしたので、森林再生に取り組まれている事例も紹介されています。

 襟裳岬の再生は一九五三年、浦河営林署に「えりも治山事業所」が新設され、草を根付かせることから始まった。

(中略)

一九五四年から木を植える木本緑化を実施し、二〇一三年には砂漠化したほぼ全面積に当たる一九三ヘクタールの森林が蘇っている。

(中略)

緑化後、冬から春にはウニ、カニ漁を、夏にはコンブ、秋にはサケ、マス漁と海の資源回復によって一年中働くことが可能になった。

『森が消えれば海も死ぬ』P.155-156より引用

このように実際に森林の再生によって海の生態系も回復し始めている事例も存在しているようです。

もはや人類が地球に与えた影響は森林だけに留まらないでしょうが、できる保全はとにかく進めていかないといけないでしょう。

森林に限らず自分にできることを考えていきたいと思います。

関連する読書メモ

・『大量絶滅はなぜ起きるのか』

本書への言及あり。地層から過去の大量絶滅の原因を考察する本となっています。

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気になった言葉

後日調査したらリンクを追加予定です。

  • 栄養塩

ひとこと

最近ちょくちょく講談社ブルーバックスの本を読むようになりましたが、とても分かりやすく読みやすいので良いですね。

本書に関連する内容で言っても

  • 海洋
  • 植物
  • 大気

など色々派生が考えられそうなので、ブルーバックスを読み込んでみようと思います。