「システム」というのはなかなか心惹かれるワードだと思います。
本書では「システム思考」として、世の中の出来事を「システムとしてとらえる」という視点が提示されています。
実践するにはかなり難易度が高い思考法ですが、身に着けることができれば大きな力になってくれると思います。
今回は『世界はシステムで動く』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

- 著者
- ドネラHメドウズ
- 訳者
- 枝廣淳子
- 出版社
- 英治出版
- 発行日
- 2015年01月23日
この本について
どのような本か
ジャンル
自己啓発
テーマ
世界を「システム」として捉え、分析する「システム思考」の基礎を説明する
どんな人に向いているか
- 「モデル化」「システム化」の手法を知りたい人
注目した要素
- 1
システム思考
あらゆるものを「システム」として考え、分析する思考法 - 2
フィードバック・ループ
安定状態を追求する「バランス型」と、成長or暴走が自己増幅する「自己強化型」がある - 3
レバレッジポイント
システムの中で介入すべき場所
所感メモ
本書を選んだ理由
「物事の本質を見極める」ジャーナリスト的視点を身に着けたいと思っていました。
そこで本書の副題「いま起きていることの本質をつかむ考え方」という言葉につられ、本書を読んでみることにしました。
また、著者のドネラ・H・メドウズさんは、元々「システム・ダイナミクス」という学問の研究者でしたが、ある時スパッとやめてジャーナリストに転向したそうです。
そういった面でも何らかのつながりを感じました。
システム思考の基礎
本書では「システム思考」という考え方が示され、著者がどのような手法でそれを行っているかが説明されていました。
訳者の方の文書ですが、システム思考についての説明を引用してみます。
(前略)あらゆるものを「システム」として考え、分析するのが「システム思考」です。
さらに、さまざまなシステムを分析することで、システム独自の特徴や性格、注意すべき点などを理解し、氷山の一角でしかない「出来事」レベルではなく、システムの「構造」やその奥底にある「メンタル・モデル」(意識・無意識の前提、思い込み)に働きかけることで、必要な変化をより効果的に作りだしていくことができます。
『世界はシステムで動く』P.3より引用
そして、本書で言うシステムは以下の要素でで構成されているとされます。
- 要素
- つながり
- 機能または目的
ただ、本書の説目では基本的にバスタブの例として「ストック」と「フロー」という言葉で書かれていました。
・ストック
時間の経過とともに蓄積された物質や情報の蓄え、量、蓄積
・フロー
時間の経過とともに変わるもの
例、注水と排出、成長と衰弱、預金と引き出し、成功と失敗
P.43より
これに合わせて「フィードバック・ループ」を追加し、ストック・フロー図を基に考える方法が展開されています。
・バランス型フィードバック・ループ
安定を求め、目標を追求し、あるいは調整をはかる
例、出生率の上昇により人口増加、さらに出生率上昇…
P.59より
・自己強化型フィードバック・ループ
増幅型、自己増殖型、雪だるま式のもので、健全な成長や暴走型の破壊をもたらす
例、死亡率の上昇により人口減少、さらに出生率低下で人口減少…
P.62より
この考え方を用いて世界を「モデル化」することが「システム思考」の基礎となります。
また、このフィードバック・ループの考え方はシステム思考に限らず様々な分野で役立つ概念だと思いますので、押さえておきたいです。

(図を作ってみましたが、これだけでは何もわからないと思いますので直接本書を読んでみてください…)
そして、考えたシステムをどう生かすかというと、そのシステムに有効に干渉するための”レバレッジ・ポイント”を考えます。
レバレッジ・ポイントという考え方は、システムの分析だけのものではありません。伝説の中にもしっかりと出てきます。たとえば、「特効薬」や「トリムタブ(船舶の舵につけるさらに小さな舵で、巨大なものを小さな力で動かすことができる)」、「魔法の薬」、「秘密の通路」、「魔法の合言葉」、「たったひとりで歴史の流れを変えるヒーロー」、「大きな障害を難なく通り抜けたり乗り越えたりする方法」など。私たちは「レバレッジ・ポイントが存在する」ことを信じたいだけではなく、「どこにあるのか、どうすれば手が届くのか」を知りたく思います。レバレッジ・ポイントとは、”パワーのポイント”なのです。
『世界はシステムで動く』P.235より引用
本書からシステム思考の基本的な流れをまとめるなら
- 要素、つながり(ストック、フロー)を特定
- フィードバック・ループの存在の有無を探る
- システム図からレバレッジ・ポイントを検討
ということでしょうか。
このフレームワークを通じて世界をモデル化して分析することが「システム思考」の基礎となるようです。
発展を考える
言うは易し
本書を読んで、システム思考的にモノを見られるようになるといいなと思いますが、同時に実践はとても難易度が高いだろうなということもわかりました。
そもそも、本書で言うシステム思考の基礎
- 「要素」、「つながり」、「機能or目的」
- フィードバックループ
- レバレッジポイントの検討
これらは程度(というか精度?)の差は同然あれど、何かを思考するときには無意識に行っているものではないかと思います。
普段は明確に「モデル化してやろう」と思っていないだけで、これらの手順を踏まずに「考える」というのは無理だと思います。
例えば、”電気”を例にするなら、おおよそ
- 電流、電圧、抵抗値、効率といったものが「要素」
- 例えばオームの法則(V=RI)などが「つながり」
- V=RIで電流Iから電圧Vを特定したいなら、レバレッジポイントは「抵抗R」
超簡単な例ですが、方向性は同じはずです。
「要素」「つながり」「レバレッジポイント」など、言葉を明確に定義として持っていないだけで、概念的にはみんな普段から行っている一般的な「考える」プロセスを明文化したものだと思いました。
本書で言う「システム思考」が難しく感じるのは、「社会問題」や「ビジネス」など、言葉や定理が明確でない問題を中心に論じられているからでしょう。
本当に実践を考えるのであれば、
- 普段から「考えた」プロセスを書き出す
- 要素、つながり、機能、目的を定義する
- 図にしてみる
これを愚直に積み上げていき、慣れてきたら「社会問題」や「ビジネス」など、言葉や定理が明確でない問題にも適用してみる、という流れになるでしょうか。
自分の思考を明確化し、システム思考的にすり合わせる感じですね。
正直「いちいちそんな事やってられるか!」と思いますが、それを怠らず積み上げていった人たちの到達点が「システム思考」なのだと思います。
思考法よりまずは「教養」を
思考法(本来は一つの学問として研究されている内容のようですが)の本として大変勉強になります。
「身に着けられれば」という枕詞は付きますが、今まで読んだ「思考法」の本としては一番魅力的に感じます。
しかし、一冊の本としてみれば結局のところ「方法論の羅列」であることに変わりはないのかなという印象です。
膨大な時間を投下してこの「システム思考」を研究してきた方は別として、我々の様に本書を「ビジネス書」として読んでいる層にとっては優先度は低いと思います。
もちろん素直に実践できるなら、それが最高にいいとは思いますが。
それよりもまずは、「教養」として様々な分野、内容に触れていくことの方が明らかに有用だと思います。
今後本当に「システム思考」的に、物事を「モデル化」して考えるにしても”事例集”的に幅広い教養を身に着けておくことを優先してもいいのではないかと思います。
念のためもう一度書きますが、これは「我々の様に本書を「ビジネス書」として読んでいる層にとっては」の話です…
関連する読書メモ
・『脳は世界をどう見ているのか』
内容としては直接関係はありません。ただ、”新しい脳”である新皮質は「世界をモデル化して捉える」とされています。そのため、本書のような「システム思考」は脳の基本的な構造に則っており、「考えること」の基本に忠実であることは間違いないのではないでしょうか。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- フィードバック・ループ
ひとこと
身につけられればとても力になるであろう「システム思考」の本でした。
実践するにはかなり根気強く試行を繰り返す必要がありそうです。