「定住」から少し派生し、「農耕」についても調べてみようかと思い本書を読みました。
本書では、世界各地の農耕の発生とともに「栽培植物自体も品種改良をされてきた」という視点が示されていました。
今回は『栽培植物と農耕の起源』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

- 著者
- 中尾佐助
- 訳者
- -
- 出版社
- 岩波書店(岩波新書)
- 発行日
- 1966/01/25
この本について
どのような本か
ジャンル
人類史
テーマ
世界各地の農耕の手法と、栽培植物の改良の歴史を考える
どんな人に向いているか
- 「肥沃な三日月地帯」以外の農耕についても知りたい人
注目した要素
- 1
栽培植物の品種改良
バナナ、イモ、ムギ、マメ、コメなどの作物は野生種とは異なり品種改良を繰り返されたもの - 2
世界各地の農耕
根栽農耕文化、照葉樹林文化、サバンナ農耕文化、地中海農耕文化 - 3
コメ→ムギの栽培に移行した地域はない
コメはムギよりも美味い
本書を選んだ理由
定住と農耕は切っても切れない関係にある、ということでかなり古い本ではありますが「農耕の起源」というタイトルを見て本書を選びました。
各地の農耕手法
地域によって気候や野生種として周辺に生息している植物も異なるわけですので、当然世界各地で異なった農耕文化が発生していたとされています。
そして、各地の農耕文化にはそれぞれ特色を持った「栽培植物」があり、それらは「品種改良」と続けた結果生まれてきたものも複数存在しています。
簡単にまとめてみます。
・根栽農耕文化
場所:東南アジア
品種改良:バナナ、ヤムイモ、タローイモ、サトウキビ
・照葉樹林文化
場所:中国、日本、ブータン等?(明言されず読み取りづらい)
作物:茶、絹、ウルシ、柑橘、酒、シソ
・サバンナ農耕文化
場所:アフリカのサバンナ地帯
作物:マメ類(レンズマメ、ヒヨコマメ、食用スウィートピー)、果菜類、油料作物
・地中海農耕文化
場所:地中海東岸地方
作物:オオムギ、コムギ、エンドウ等一年草類
野草と雑草
「野草」「雑草」これらの言葉に使い分けが存在していたということを初めて知りました。
野草も雑草も同じことと考える人が多いだろうが、これは区別できる。雑草とは人間の作りだした環境に生ずるもので、人間文化の伝播とともに伝播し、地球上で雑草は常に野草より地理的分布がひろいのだ。
『栽培植物と農耕の起源』P.157-158より引用
このような区分になっていたようです。
- 雑草:人間の作りだした環境で発生した種
- 野草:人間と関係なく存在する種
ということですね。
この「雑草」として人々の生活圏に入り込んだ植物が後に「栽培植物」へと変わっていき、農耕に取り入れられていくこともあったようです。
今後は意識して使い分けてみたいと思いました。
コメはムギより好まれる
ちょっと面白かった部分です。
人間は味覚上ムギよりもコメを好むのでしょうか?
最近の、それこそ「品種改良」された品種であれば麦飯もおいしいですけどね…
コメがムギよりうまいということはコムギの中心地帯でもいまではわかっている。イランやイラクのようなムギ作文明の発生地でもこんにちでは灌漑できるところではコメをつくるのに熱心であり、米食は上流階級にのみ許されるものとなり、コメの価格はコムギに数倍している。
(中略)
人間の歴史をみて、コメからコムギに転換した民族は存在しないのに、コムギ食民族はどんどん米食を取り入れていく現状である。明日の人類の主穀は、コムギよりコメとなる傾向が認められると認識すべきである。
『栽培植物と農耕の起源』P.151より引用
現代で「人類の主穀がコメになった」ということは現状無さそうですが、面白いテーマだと思いました。
日本はどうでしょうか?
江戸時代ごろまでは麦、粟、稗等も消費されていたイメージがありますが、確かにそれ以降は完全に米のイメージですね。
(最近は米価格高騰の影響で逆に消費量が減っていると報道されていましたが…)
一度これについても調べてみたいと思いました。
発展を考える
食文化
本書で改めて感じたのは、ある地域の特色を調べたいならその「食文化」から手を付けるのはかなり有効ではないのか?ということです。
人類はかつて猿であった時代から、毎日食べつづけてきて、原子力を利用するようになった現代にまでやってきた。その間に経過した時間は数千年でなく、万年単位の長さである。また、その膨大な年月の間、人間の活動、労働の主力は、つねに、毎日の食べるものの獲得におかれてきたことは疑う余地のない事実である。
『栽培植物と農耕の起源』P.iiより引用
旅行に行ったら大抵、その土地の名物を食べようと考えますよね。
であれば、そこから手を付けるのは当たり前のことではありましたが、今で「農耕」だとか「作物」のような”固い”内容にばかり目が言っていたように思いました。
とはいっても、古代の食文化をどこまで調べられるかは分かりませんね。一度どういった本があるか調べてみようと思います。
関連する読書メモ
・『銃・病原菌・鉄』
この本でも農耕の発展や栽培植物の起源については大きく取り上げられています。どうしても肥沃な三日月地帯に偏りがちではありますが、併せて読んでみる価値はあると思います。
・『反穀物の人類史』
本書『栽培植物と農耕の起源』でも「イネ科の栽培の発展で国家を作りあげる力を示してきた」という記述がありましたが、この本ではその「国家」の捉え方に疑問を呈する本となります。一緒に読んでも楽しめるでしょう。
・『遊牧民から見た世界史』
本書『栽培植物と農耕の起源』でも「イラン、チベットで農耕と放牧の兼業を行っていた」という様な記述がありました。この本でも一般的にイメージされる移動遊牧をするグループ、定住し農耕を行うグループを合わせて「国家」を形成していたという内容が示されています。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- 食文化
ひとこと
かなり古い本ですが、非常に読みやすい文章でした。
もしかしたら岩波書店にて改定されているのかもしれませんが、「古い本の文章は読みづらい」という思い込みは無くなりそうです。
今後は「古いな…」と言って足踏みするのはやめようと思います。