サケの遡上については有名ですが、そのほかのことは余り知らないため、いい機会かと思い本書を読みました。
本書では、稚魚放流の是非や魚との付き合い方といった視点が提示されています。
今回は『サケマス物語 ——魚の放流を問いなおす』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

- 著者
- 森田健太郎
- 訳者
- -
- 出版社
- 筑摩書房
- 発行日
- 2026年01月06日
この本について
どのような本か
ジャンル
社会、生物
テーマ
「サケの放流」の問題点を通して魚との付き合い方を考える
どんな人に向いているか
- サケの生態について知りたい人
- 魚の放流について調べたい人
注目した要素
- 1
サケは匂いで戻ってくる
サケは「降下した」川の匂いを記憶して戻ってくる - 2
環境改善で生息数も戻る
放流だけでは生息数は回復せず、自然環境の再生が必要 - 3
漁獲量の制限が必要
気候変動で魚の繁殖力が落ちており、漁獲量を減らさなければ滅ぶ
所感メモ
本書を選んだ理由
これまで地球科学系の本を広く浅く読んできています。
それに伴い気候変動による生物の”絶滅”についての内容もいくつか触れてきました。
現代では人間活動によって野生生物の生息域は縮小しており、数を減らしている生物がたくさんいます。
個人では何もできないかもしれませんが、せめてこういった問題に関心をもってどのような取り組みがあり、どのように評価されているかくらいは知っておこうと思いました。
サケの”遡上”と放流の問題
今まで詳しく知りませんでしたので、良い機会となりました。
サケは川を遡上して淡水で産卵するわけですが、その際自分が降下した川に戻って来るそうです。
これについても記述を引用してみます。
サケ科魚類は、生まれた川に戻るという母川回帰性という能力をもつ。この能力は驚くほど高精度で、支流レベルの地点にまで回帰することが知られている。ただし、その精度は100%ではなく、他の川に入り込む迷入と呼ばれる現象も報告されている。
(中略)
厳密に言えば、サケ科魚類が戻るのは「生まれた川」ではなく「降下した川」である。というのも、川の匂いを記憶する刷り込みは、生まれた瞬間ではなく、稚魚が川を下る時期におこるためである。このため、稚魚が生まれた川とは異なる川に移植された場合でも、成長した親魚は、移植先の川に回帰することになる。
『サケマス物語』P.041-042より引用
そのため、稚魚を放流したのであれば、その放流した川の環境がサケの産卵に適した環境になっていなければ何の意味もないということになります。
こうしたサケの性質にまで考えを巡らせたうえで放流が行われているのか?と言えば答えは”No”でしょう。
また、考え無しの放流は遺伝子的にも良くない影響が懸念されるということです。
サケは母川回帰性をもつ魚であり、一般に地域ごとに適応した独自の集団が存在する。
しかし、他地域から持ち込まれた個体が放流され、これらと交雑してしまうと、本来その地域にあった遺伝的多様性が失われてしまう。こうした問題は、メダカやホタルなど、他の生物の放流でもたびたび指摘されてきた。
『サケマス物語』P.120より引用
「放流」は微笑ましいニュースとして取り上げられていますが、こういった大きな問題を抱えているようです。
一方的に”良いことだ”と取り沙汰されるのも考えものですね。
情報を持ったうえで正しい評価を下せるようになりたいものです。
個体数回復のためには
放流が良くない結果をもたらすのであればどうしたらいいのか?
本書では「放流する個体の適正化」も挙げられていますが、そのほか3点もここに残しておきます。
- 自然産卵の確保
- 漁獲量の適正化
- 河川環境の再生
以前読んだクジラの保護に関する本でも日本の「漁獲量」管理については言及されていました。
サケでも同様に現在の日本では適切に個体数や漁獲量の管理がされていないようです。国にとってもリソースは限られていますので、全ての生物に目を配ることはできないということなのでしょうね。
ここでは、ひとつ「自然産卵の活用」について引用してみます。
ふ化放流が普及する以前は、日本ではサケを自然繁殖によって増やす取り組みが行われていた。いわゆる「種川制度」である。明治時代には、自然産卵に適した場所に相当数の親サケを遡上させ、過密状態を避けるために仕切りを設け、事前産卵を保全する措置がとられていた。
(中略)
ところが、1970年代後半になると、自然管理計画の中から自然産卵の位置づけが姿を消した。この時期は水質汚濁が深刻化していた時代でもあり、自然産卵に期待することが困難であったのかもしれない。
しかし現在では、多くの川で水質が改善されており、当時とは環境が大きく異なっている。近年、低迷するサケ資源の回復を図るうえで、自然産卵の活用も再び注目されつつある。
『サケマス物語』P.174-175より引用
過去に取り組まれていた自然産卵の保全が水質汚濁により消えてしまったというのは知りませんでした。
また、最近は当時と比べれば水質が改善してきているというのは本当でしょうか?(こんな所に嘘は書かないと思いますが…)
これについても一度調べてみたいと思いました。
発展を考える
野性の生物との付き合い方は?
大変難しい問題だと思います。
本書で取り上げられていた内容でも
- サケの放流
- ダムへの魚道の整備
- 漁獲量を把握していないこと
など挙げられています。
特に「魚道の整備」について、本書ではこれによって魚が戻ってきたと書かれています。
しかし、ネットで軽く検索しただけでも「砂利で埋まってしまう」「魚は登れない」など否定的な意見は簡単に見つかりました。
結局何が正しいやら分かりませんね。
結局、人工的に作られたものでは自然の代わりにならないのか、ただ良い方法が見つかれば生物の保護につながるのか。
難しすぎる問題ですが、もう少し情報を集めてみたいと思います。
関連する読書メモ
・『クジラから世界を考える』
この本でも漁獲量が適正に管理されていないことでクジラの将来を危ぶんでいるような記述があります。ここはどんな生物について考える場合でも重要になるポイントなのだと思います。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- ダム
- テムズ川
ひとこと
サケは日本に限らず人類の食生活に強く結びついてしまっており
- 獲るな
- 殺すな
- 食うな
では解決できない問題かと思います。
やはり、サケの生態をしっかり研究したうえで、放流にしても自然産卵の再生にしても漁獲量の制限にしても、適切な対策を考えていかなければならないようですね。
一個人にできることは少ないかもしれませんが、情報だけは集めて何かできることが無いか考え続けていきたいと思います。