私は初めて目にしましたが、かなりのロングセラー本のようです。
「砂糖」を追うことによって世界史を考えるという内容となっています。
「砂糖の歴史」と言うと、プランテーションや奴隷貿易といったあまり良い印象のないイメージがついてきますが、同じ人類として知る価値はあると考えます。
ここでは『砂糖の世界史』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

- 著者
- 川北稔
- 訳者
- -
- 出版社
- 岩波書店(岩波ジュニア新書)
- 発行日
- 1996年07月22日
この本について
どのような本か
ジャンル
世界史
テーマ
「砂糖」を中心に世界史の流れを読み解く
どんな人に向いているか
- 砂糖の歴史を知りたい人
- 世界史を違った視点で見たい人
注目した要素
- 1
砂糖の起源はインド
イスラム教徒により地中海へ持ち込まれ、十字軍によりヨーロッパに認知され、大交易時代にヨーロッパ人が栽培開始 - 2
プランテーションでの栽培
サトウキビは地味(ちみ)を大きく失わせるため移動し続けて栽培する必要があり、膨大な人数の労働者が必要となった。そして奴隷貿易とつながる - 3
ヨーロッパへの浸透
当初は”薬”扱いだったが、コーヒーハウスにて茶と合流し「ステイタス・シンボル」として普及。スペイン、フランスにてカカオと合流しチョコレート誕生
所感メモ
本書を選んだ理由
歴史についての本を何冊か読んでいますが、やはり「人物」や「出来事」を中心に開設される本のほうが多いと思います。
「砂糖を中心に見て考える」という、少し違った視点から歴史を学べるのはとても面白いと思い本書を読むことにしました。
また、「岩波ジュニア新書」ということで、本来は若年層向けの本ですので、本質的な内容に絞って分かりやすく解説されているだろう、という期待も込めています。
プランテーションとの関係
やはり、砂糖、サトウキビの歴史と言って連想されるのはこれだと思います。
そもそもなぜプランテーションという形態をとって栽培されることになったか?に関する内容を残しておきたいと思います。
(前略)砂糖の生産には、その生産地をつぎつぎと移していかなければならない理由が二つあったのです。つまり、サトウキビの栽培には、膨大な人数の、命令の行き届いた労働力が必要だということと、それが地味(ちみ)、つまり土地の植物を育てる能力を急速に失わせる作物であったということです。この二つの条件から、砂糖きび栽培は、早くから奴隷のような強制労働を使い、プランテーションのかたちをとる大規模な経営がとられ、新しい土地と労働力を求めて、つぎつぎと移動していったのです。
『砂糖の世界史』P.28より引用
正直この記述だけでは理由の説明として弱いため、別の機会にもう少し詳しく調べてみたいと思います。
しかし、重要なのは
- 統制の取れた大規模な労働力
- 定期的な土地移動
これらが必要だったということですね。
そのためには奴隷のような存在が必要不可欠だった、そのためアフリカから奴隷を運びカリブ海の島々でプランテーションが行われた。
生まれるべくして生まれてしまった方式ですが、現在にまでその爪痕が残っているのですから、ヨーロッパの国々はなかなかに暗い歴史を作ってしまったと言えそうです。
英国への浸透
本書後半ではイギリスの砂糖事情がかなりの紙幅を割いて解説されています。
理由としてはイギリスがかなり奴隷労働によって生産された砂糖に強く依存していた歴史があったからでしょうか?
いずれにしても、簡単に流れを残しておこうと思います。
- ~16世紀:薬品、デコレーションとして扱われる
- 17世紀~:「茶」がもたらされ、コーヒー・ハウスで売られる
- 紅茶に砂糖を入れる飲み方が「ステイタス・シンボル」としてジェントルマン階級に浸透
- 19世紀:産業革命により、都市部の工場労働者が増加
- 「砂糖入り紅茶」が労働者の普通の朝食になる
- 昼食と夕食の間が空き、それを埋めるため「アフタヌーン・ティー」「ティー・ブレイク」といった習慣が生まれる
当初砂糖は「薬品」として扱われていましたが、紅茶との合流によって少しずつジェントルマン階級に「砂糖入り紅茶」という形で受け入れられていったようです。
「砂糖」も「茶」も高価だったようですが、だからこそ高い階級の人々が「ステイタス・シンボル」として消費するようになったことが普及の始まりとなりました。
そして、産業革命が起こると以下の要因によって「イギリス風朝食」の中心となっていきました。
- 湯が沸かせれば用意できること
- 即効性カロリー源となること
- カフェインを多く含み朝から覚醒状態で働ける
「ステイタス・シンボル」と「生活必需品」の2つの側面があったようです。
発展を考える
歴史を学ぶ上で重要な視点かも
今回は「砂糖」でしたが、これに限らず何かテーマを決めて、それを中心として歴史を学ぶというのは大変有効な手段かもしれないと思いました。
どうしても歴史書というのは性質上、出来事の羅列になりがちですよね。
本書はそうでは無いというわけではありませんが…
ただ、それでも何か一つ”軸”が定まっていると、必然的にそれにまつわる重要な事項・事件・人物・時代も定まることになります。
本書なら
- カリブ海でのプランテーション
- それに伴う奴隷貿易
- イギリスでの流行
といった項目がそれにあたるのではないかと思います。
このように関連付けて頭に入れようとする方が定着しやすいですし、連続的に内容に触れることになるので順序も間違いづらく、事象間のつながりも見えやすいですね。
ある意味、学校の歴史の授業に欠けているのはこういった視点なのかもしれないと思いました。
とはいえ、時間が限られている学校の授業でこんな回りくどいことはしていられないのでしょうが…
関連する読書メモ
・『教養としての「ローマ史」の読み方』
本書では「砂糖」が取り扱われているように、この本では「ローマ」を古代史を学ぶ軸として押さえておこうと提唱されています。初期人類の発展やヨーロッパについて学ぶのであればローマは避けて通れない内容だと思いますので、「軸」として一読もいいのではないかと思います。
・『教養としての数学史』
上記の「ローマ史」と似ていますが別シリーズです。この本では「数学」を軸として扱っています。こちらも併せて自分のなかの年表の肉付けに役立つのではないかと思います。
気なった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- 地味(検索しても「じみ」しかかからないため)
- コーヒーハウス
ひとこと
先述の通り、「砂糖」、そしてサトウキビは奴隷貿易が誕生する原因の一角となってしまった作物の一つです。
本書は砂糖の性質上、「世界史」というよりは「イギリス史」に偏っていたようにも思いますが、ひとつの軸に絞って歴史を追うのはとても良い方法だと思います。
冒頭にも書いた通りロングセラー本とのことで少々古いですが、わかりやすくまとまっていて大変面白いと思いました。