「地球科学」について漠然と広く学ぶ目的の一環で本書を読みました。
本書では、富士山の噴火による影響の考察や今後間違いなく来ると言われている南海トラフ地震との関連が示されています。またハザードマップの見方など防災に関する情報も盛り込まれていました。
今回は『富士山噴火と南海トラフ』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

- 著者
- 鎌田浩毅
- 訳者
- -
- 出版社
- 講談社(ブルーバックス)
- 発行日
- 2019年05月16日
この本について
どのような本か
ジャンル
自然科学
テーマ
富士山の噴火について、過去に起こった噴火の被害や南海トラフとの関連など地理的要因を基に考察する
どんな人に向いているか
- 地震、噴火の被害について知りたい人
- 富士山について理解を深めたい人
注目した要素
- 1
火山灰の影響
火山灰は”ガラスのかけら”であり、人体や家屋に被害を与える。また、電子機器に付着することで動作不良を起こす。ライフラインが停止する危険もあり - 2
富士山は噴火のデパート
過去の噴火にて火山灰、溶岩流、火砕流、泥流など様々な噴出物を出し続けてきた - 3
今後予想される災害
東日本大震災による刺激により富士山は噴火を起こしてもおかしくない状態にある。2030年代には高確率で南海トラフ地震の発生が予想されている
所感メモ
本書を選んだ理由
最近は「地球科学」的な内容を浅く広く学ぶため、関連する本をまとめて読むようにしています。
火山に関する記述はどの本を読んでも登場します。また、それに合わせてプレートの動きとの関連も登場する機会が多いため、日本の地理的要因についての本書を読むことにしました。
火山噴火によって起こる現象
火山の噴火で何が起こるかというと、漠然と
- 火山灰を放出するのかな
- 溶岩が流れてくるのかな
くらいにしか分かりませんでしたが、本書では詳しく解説されていました。超簡単にまとめてみます。
①火山灰
軽石や岩石が細かく砕かれてできたガラスの破片。
吸い込むと気管や肺が傷つけられ病気を引き起こす、降り積もって家屋を押しつぶす、植物の葉の上にこびり付くと光合成を妨げ枯れさせる、電子機器に付着して動作不良を起こさせるなど
②溶岩流
マグマが液体のまま地表に流れ出たり、地表近くまで貫入したもの。
二酸化ケイ素の量で粘り気が変わり、冷えた後にできる岩石の種類が変わる。
溶岩はなかなか冷えず、迅速な復旧が困難である。
③噴石・火山弾
噴石:加工を埋めていた溶岩が砕かれ、放り上げられたもの。
火山弾:マグマが柔らかく、いろいろな形状に変えながら飛んでくる噴石。
噴火の種類によって噴石の飛んで来かたが変わる。
・ブルカノ式噴火:比較的小規模の噴火
・ストロンボリ式噴火:マグマのしぶきを断続的に噴き出す
・プリニー式噴火:大規模な噴火で、噴石が広域に降り積もる
④火砕流・火砕サージ
マグマの破片やガス、石片など様々な物質が一段となって流れる現象。煙のような見かけをしている。
高速で高温の極めて危険な流れで、通過した地域を全て焼失させてしまう。
⑤泥流
土砂が水とともに斜面を流れ下る現象。
火山灰や岩石が水と混ざって押し流され、流域に大量の堆積物を残す。
また、火山はそれぞれ地理的条件や溶岩の化学組成など状況が異なるため、こういった被害の出方にも当然違いが出てくるようです。
そして、富士山は過去の噴火にて、上にまとめたような様々な災害を引き起こしてきたとのことで「噴火のデパート」と呼ばれるとのことでした。
これまで見てきたように、富士山は「噴火のデパート」と呼ばれるほど、火山灰、溶岩流、火砕流、泥流など多様な噴出物を出しつづけて、およそ10万年ものあいだ、噴火を繰り返してきた。しかし、現在は1707年の宝永噴火以来、300年ものあいだ沈黙を保っている。そのため富士山が噴火するなど思いもよらないという日本人は多いのだが、いうまでもなく、このまま噴火をしないままでいるということはあり得ないのである。
『富士山噴火と南海トラフ』P.140より引用
富士山がこれから噴火を起こす可能性があるという意識は持っておかないと危険なのかもしれません。また、2011年の東日本大震災によりマグマだまりが刺激され、いつ噴火を起こしてもおかしくないという記述もありました。
噴火災害に限らず富士山を取り巻く歴史についても一度調べてみたくなりました。
火山の恵み
個人的に面白いと感じた内容です。
- 温泉が湧出する
- 火山堆積物で濾過されきれいな湧水ができる
- 湧水に微量のミネラル分が付与される
- 堆積物が平らで広い土地を作る
- 湖、滝など独特の地形を作りだす
など、日本は火山の多い国ですので、結果として日本の観光地は”火山の恵み”である場合が多いようです。
我々は自分たちの生きる時間間隔で物事を見てしまいがちですので、火山の噴火やそれに伴う災害が発生すると、目先の被害にばかり目が行きがちだと思います。
そして、噴火は「警戒するもの」「怖いもの」としか思えなくなってしまう。
もちろん我々人類からすれば火山噴火がとても危険であることは間違いありませんが、長いスケールで物事を見ることができれば、その噴火によって新しい地形、新しい恵みが生まれているということでしょう。
そして、現在我々が生きている日本自体がそうやって形作られているということも忘れないようにしたいです。
発展を考える
岩石の性質について調べたい
本書では富士山と比較する目的でもあり様々な火山が取り上げられていました。
火山の噴火の際には溶岩が地表に吐き出され、それが冷えて”火山岩”がつくられる和kですが、溶岩の化学組成によってつくられる”火山岩”も変わってきます。
これは二酸化ケイ素(SiO2)の量によって起こるらしく、その比率によって
- 溶岩の性質
- 噴火被害の状況
- 災害の後にできる岩石
- 溶岩によってつくられる地形
といったものにも違いが出てくるとのことでした。
今まで特別注意を払ってきていませんでしたが、過去に読んでいた他の本でも
- 地層に含まれる岩石から気候変動を読み解く
- 岩石の化学風化に二酸化炭素が使用される
- 岩石の種類によるプレートの動きの違い
など何度も”岩石”についての内容が登場していました。
一度”岩石”というキーワードにも目を向けて本を読む機会を設けてみたいと思いました。
そして、『水の惑星「地球」』という本を読んだ時にも思ったことですが、教養の範囲ででも化学についても勉強しておくとこういった内容の理解を大きく助けてくれるだろうなとあらためて思いました。
折角なら地球科学を通して学べると都合がいいのですが、そういった本は存在するんでしょうか?
関連する読書メモ
・『水の惑星「地球」』
火山の噴火には一見関係なさそうな「水」についての本です。しかし、マグマのなかには水が溶け込んでおり、それが原因となって噴火を起こすことがあるということがこの本でも言及されています。また、地震の原因となるプレートの動きも水と密接な関係にありますので、一緒に読む価値があるでしょう。
・『大量絶滅はなぜ起きるのか』
三畳紀末の大量絶滅の原因を探ろうとする本です。内容としては本書と直接関係はありませんが、こちらでも地層に含まれる岩石からその当時の気候変動を読み解こうとしています。というわけで、やはり岩石についても少しずつ学ぶ必要がありそうです。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- 岩石
- 偏西風
ひとこと
いままでも何度か大量絶滅や気候変動の文脈で「火山の噴火」について触れる機会はありましたが、改めて火山を中心として書かれた本を読んでみると、当然ながらとても奥深いものだと実感しました。
本書の著者である鎌田浩毅さんは他にも火山についての本をたくさん書かれているようです。また機会があれば読んでみたいと思いました。