その山を見上げて

読書と思考を積み上げていきます。

『世界の海へ、シャチを追え!』──シャチの群れにも文化がある

最近、「人類と他の生物との共生」を考える機会が増え、その一環として本書を読みました。

本書では世界各地の海での観察からシャチの生態や群れの様子、環境汚染による影響といった内容が示されています。

今回は『世界の海へ、シャチを追え!』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

書籍情報
『世界の海へ、シャチを追え!』の書影
『世界の海へ、シャチを追え!』
著者
水口博也
訳者
-
出版社
岩波書店(岩波ジュニア新書)
発行日
2018年05月22日
※書影は出版社公式サイトより引用
目次

この本について

どのような本か

ジャンル

自然科学

テーマ

世界の海での観察を通してシャチの生態と群れごとの文化の違いを考える

どんな人に向いているか

  • シャチの生態を知りたい人

注目した要素

  1. 1

    シャチは家族で生活する
    シャチも哺乳類であり、家族や群れの強い絆が存在する

  2. 2

    群れごとに文化がある
    群れによって生活様式が異なり、独特の狩りの仕方を受け継いでいる

  3. 3

    海洋汚染の影響
    汚染物質が体内に蓄積し、繁殖能力を失いつつある

所感メモ

本書を選んだ理由

気候変動や人類活動による生物への影響を調べていると、「人類と他の生物との共生はできないのか?」と考えるようになってきました。

その流れで様々な生物の生態について知りたいと思い本書を選びました。

また、最近クジラについての本を読んでいたことも興味を持った要因となったかもしれません。

シャチの生活様式は一様ではない

シャチと言えば「海のギャング」と呼ばれているというのは聞いたことがありましたが、どんな生活を送っているのかは知りませんでした。

結論として、シャチの生活様式は群れによってかなり異なるということです。

そのため、ギャングという字面から想像されるような大型の海生哺乳類を襲う様なシャチばかりではない。ということにもなります。

本書で紹介されている、著者が観察してきたシャチの群れには2種類のタイプがあり

  • レジデント:定住者、特定の海域に頻繁に姿を現す群れ
  • トランジエント:一時的に姿を見せるもの、広く海を泳ぎまわる

人間がシャチを観察するとしたら、やはり陸地に拠点を持ちつつ沿岸部に繰り出して観察するという形式をとることになるようです。

そのため、どうしても先述の「レジデント」の群れを中心に追いかけ、時折姿を見せる「トランジエント」達を見つけたら都度そちらも観察する。

となるようで、実際本書の構成もそのようになっています。

著者はカナダのジョンストン海峡で、「二コラ」という高齢の雌を中心とした群れ観察していた際のエピソードが紹介されています。

この群れについての記述を引用してみます。

(前略)

(二コラの家族をふくめ)バンクーバー島周辺に頻繁に姿を見せるシャチたち(同じ海域に頻繁に姿を見せるために、「定住者」の意味で「レジデント」と呼ばれます)は、アザラシやイルカといった大きな動物を襲うことなく、海峡におしよせるサケやマスを中心に、魚ばかり食べてくらしているということでした。

『世界の海へ、シャチを追え!』P.35より引用

どうしてもシャチと言えばアザラシを襲っているイメージを持ってしまいますが、魚ばかり食べている群れも存在するようですね。

というよりは、「群れによって食性に違いがある」など考えたこともありませんでした。

我々人類でも地域によって食文化が異なることを考えれば当たり前のはずですが、どうしても他生物に結びつけて考えることができていませんでした。

狩りの仕方を受け継ぐ

先述のようにシャチは群れで生活をしています。

そして、群れによって生活様式、捕食対象も異なるということも知りました。

それだけでなく、群れに異なる文化があるということは、その文化を群れで共有して次世代に伝える術を持っているということでもあります。

著者がアルゼンチンのバルデス半島で観察していた群れについての記述を引用してみます。

観察対象のシャチ「ジャスミン」がオタリア(アシカの仲間)を捉えた後の記述です。

 ジャスミンは首を激しく動かして、えものをふりまわしています。その動きを何度かくりかえすうちに、最初は体を反らせ声をあげていたオタリアの子どもは、やがて動きをなくしました。

 ジャスミンは体を反転させはじめ、寄せる波とともに海のなかに姿を消していきます。そのすぐあとのことです。オタリアの子どもの体が、宙にまいあがりました。ジャスミンが、尾びれでけりあげたのです。海面に落ちたオタリアは、ふたたび宙をまいましたが、そのときは尾びれでけりあげたのが誰かはたしかめることができませんでした。

 しかし、そのあとでえものをくわえて泳ぎだしたのは、ジャスミンの子どものメラです。おそらく母親のジャスミンは子どものメラに、狩りの方法やえもののあつかいかたを教えていたのでしょう。

『世界の海へ、シャチを追え!』P.124より引用

このように子供に自分の狩りの技術を継承させるような行動をするようです。

こうして群れの文化が次世代に受け継がれていくのだと思います。こういった行動は哺乳類だからこそではないでしょうか?

魚ではないからこそです。

人間以外にも「文化」があるのだ、ということを改めて感じさせられる内容だと思います。

発展を考える

海洋汚染について調べたい

最近、地球温暖化をはじめとする人類活動による地球への影響についての内容に触れるようにしており、そうすると遭遇することになるのがマイクロプラスチックの話題です。

本書ではマイクロプラスチックの話題は直接登場していませんが、PCBによる汚染の影響についての言及がありました。

何にせよ、「海洋汚染」は一度調べてみる価値のあるテーマだと思います。

ひとまず現在持っているテーマとして

  • PCB
  • マイクロプラスチック
  • 海洋ゴミ
  • 原油流出

など、これらについての本が無いか調べてみようと思いました。

関連する読書メモ

・『クジラから世界を考える』

クジラを取り巻く社会情勢について考える本です。シャチも鯨類ですので、この本でも言及があります。こちらは生態だけでなく捕鯨をはじめとした人間の事情についての内容が多いです。

bookandthink.com

気になった言葉

後日調査したらリンクを追加予定です。

  • PCB
  • 生物濃縮

ひとこと

シャチの生態について詳しく知ることができてとても面白いです。

ジュニア新書の本ですが、例によって一般書と全く遜色のない内容で、大人でも十分に読み応えのある良い本だと思いました。

そして、やはり登場するのが「人類活動の影響で行く末が不安だ」といった内容です。

世界に何が起こっているのか少しでも多く情報を集め、自分にできることを考えていきたいです。今後もこういった本を読んでいきます。