その山を見上げて

読書と思考を積み上げていきます。

『海洋プラスチックごみ問題の真実』──プラスチックごみの現状と今後は?

「気候変動」と並んで環境問題としてよく目にする「プラスチックごみ問題」についての本を読んでみました。

本書では、海洋ゴミ研究の現状、プラスチックごみの問題点といった内容が提示されていました。

今回は『海洋プラスチックごみ問題の真実』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

書籍情報
『海洋プラスチックごみ問題の真実』の書影
『海洋プラスチックごみ問題の真実』
著者
磯辺篤彦
訳者
-
出版社
化学同人
発行日
2020年07月30日
※書影は出版社公式サイトより引用
目次

この本について

どのような本か

ジャンル

社会

テーマ

海洋プラスチックごみの研究の現状と今後を考える

どんな人に向いているか

  • ゴミ問題について知りたい人
  • マイクロプラスチックについて学びたい人

注目した要素

  1. 1

    行方不明のマイクロプラスチック
    マイクロプラスチックの90%近くは行方が分かっておらず、その行方は今後の研究課題である

  2. 2

    日本周辺はホットスポット
    日本を含むアジアは環境中に流出するプラスチックが多く、対馬海流や黒潮によって日本周辺に集まってきている

  3. 3

    プラスチックごみと汚染物質
    汚染物質が付着したプラスチックを取り込むことにょり、生物の体内への汚染物質の蓄積を助けてしまう。

所感メモ

本書を選んだ理由

最近地球科学についての本を読むようになり、そうするとどうしても「気候変動」についての内容に触れることも増えます。

そして、気候変動について調べるとどうしても合わせて「人類が地球に与えた影響」として”プラスチックごみ”に関する記述を目にする機会も多いです。

そのため、一度しっかり調べてみたいと思い、その一環として本書を読みました。

見つかっていないプラスチックごみ

本書を読んで一番面白かった内容です。(地球環境的には全く面白くはありませんが…)

著者をはじめ、海洋プラスチックごみの研究者たちは、世界中の海からプラスチックごみのサンプルを採取しているそうです。

そして、回収されたプラスチックごみのサイズごとの分布をまとめると、1mm以下の「マイクロプラスチック」について、1~10%程度しか見つけられなかったということでした。

(前略)私たちは、海面から一メートル程度までに漂流するマイクロプラスチックを、曳網採取しています。海水より軽いマイクロプラスチックは、海面近くに集中しているためです。集中して浮いているのは確かなことでしょう。しかし、一ミリメートル以下のマイクロプラスチックについていえば、浮いていたのは、あるはずの一パーセントから一〇パーセント程度でしかなかったのです。

(中略)

海水よりも軽いはずのポリエチレンやポリプロピレンでできたマイクロプラスチックが見つかっています。魚など海洋生物に誤植された一部が、フンや死骸とともに海底へと沈んだのかもしれません。漂流中に表面を藻やプランクトンなど生物の死骸で覆われ、重くなったプラスチックも沈むといわれています。

(中略)

ただ、すべて断片的な情報や仮説にすぎず、消えたマイクロプラスチックの行方は、まだわかっていません。

『海洋プラスチックごみ問題の真実』P.104-105より引用

海はとても広いわけですから、とても全てのプラスチックの行方を解明することは困難でしょう。

  • 生物に誤食され沈んだ
  • 藻やプランクトンで重くなって沈んだ
  • 砂浜に打ち上げられ埋まった
  • 網で採取できないほど小さく分解された

等々仮説が示されていますが、少なからず全ての要因が絡まっているのでしょうね。

今後研究の進歩でこれを特定できる日が来るのか…注目していきたいと思いました。

汚染物質が付着

海洋プラスチックが生物に与える問題というと、よく連想するのは

  • 生物に絡まる
  • 生物が誤飲するが消化できず弱る

といった内容ではないかと思います。

しかし、本書によると生物の体内への汚染物質の蓄積にも影響を与えてしまう恐れがあるようです。

該当する記述を引用してみます。

 プラスチックに毒性はありません。そうでなければ、これほど人類に使われる素材にはなりません。しかし、海を漂ううちに、海水中に薄く広がった汚染物質を表面に吸着させていきます。プラスチックは石油からつくられるため、油と似た性質を持つ汚染物質が吸着しやすいのです。

(中略)

 さて、油と似た性質の汚染物質を「残留性有機汚染物質」といいます。良く知られたものにポリ塩化ビフェニルがあります。PCBと書いたほうが、通りがいいかもしれません。

(中略)

 海を漂う小さなプラスチックごみや破片には、このような汚染物質が吸着します。そして、海鳥やウミガメなどは、この汚れたプラスチックを誤食するのです。プラスチックごみに乗って体内に入った汚染物質は、体内の油分に溶けて、そのまま留まることが予想されます。

『海洋プラスチックごみ問題の真実』P.58-59より引用

このような問題を抱えていたとは全く知りませんでした。

  • プラスチックごみの流出
  • 汚染物質の流出

これら、一見すると直接の関係は無さそうですが、合わさることで生物・生態系に致命的なダメージを与えてしまう可能性があるということですね。

生物濃縮を後押しするということでもあると思いますので、海産物を食べる可能性のある我々人類にとっても無関係ではないでしょう。

プラスチックとの付き合い方、海洋汚染をどうしていくのか、など考えていかないと取り返しのつかないことになってしまいそうです。まずは、問題を認識するところから始めていきたいです。

発展を考える

プラスチックについての知識をつけたい

プラスチックごみ問題について関心を持ち本書を読んでみたわけですが、やはり感じるのは「プラスチックについての知識がなさすぎる」ということです。

当たり前に日常に存在するプラスチックですが、例によって私はあまり詳しく知りません。

  • ポリプロピレン
  • ポリエチレン

など名前としては口にすることがありますが、それってどういう物質でどんな特性があり、どうやって製造されているのか?

現在、イラン情勢の影響による原油・ナフサ不足によって樹脂製品も値上がりしていくでしょう。

時事的にもちょうどいいタイミングですので、プラスチックはじめ石油製品についても調べてみたいと思いました。

関連する読書メモ

・『温暖化で日本の山に何が起こっているのか』

海に流出したマイクロプラスチックが、地球の水循環に乗ってエベレストの雪として陸に渡っていくという記述あり。こちらはこちらで問題でしょう。

bookandthink.com

・『世界の海へ、シャチを追え!』

PCBを体内に取り込むことで、シャチが子孫を残す能力を弱めつつあるという様な記述あり。先述の通り、これが海洋プラスチックごみ問題と組み合わさることで、生物濃縮を後押しし、さらに深刻なダメージを残してしまう可能性もありそうです。

bookandthink.com

気になった言葉

後日調査したらリンクを追加予定です。

  • プラスチック
  • PCB
  • マイクロプラスチック

ひとこと

学術的な内容ではありますが、あくまで一般書としてとても読みやすい内容でした。

「マイクロプラスチック」「プラスチックごみ」に関心をもって最初に読む本としてかなり向いていると思います。

今後も引き続きプラスチックごみについて調べてみたいと思いました。