「森林」について学ぼうと思い本書を読みました。
本書では、林業の補助金の現状、国産の木材が使われなくなっている現状など、森林というより林業と建築を取り巻く社会情勢の本でした。
ここでは、目に留まった要素を残しておきます。

- 著者
- 白井裕子
- 訳者
- -
- 出版社
- 新潮社(新潮新書)
- 発行日
- 2009年01月19日
この本について
どのような本か
ジャンル
社会
テーマ
国産木材、林業、伝統木造建築など、日本の木を取り巻く社会情勢について知る
どんな人に向いているか
- 林業に関心のある人
- 伝統木造建築の現状を知りたい人
注目した要素
- 1
伝統木造建築ができない
日本の伝統的な建築は建築基準法を満たさず立てることができない - 2
伐採されない木
日本には戦後に植林された豊富な森林資源があるが、林業の衰退により伐採されることなく眠ってしまっている。そして外材を輸入して使っている - 3
補助金制度
林業の実態と噛み合っておらず、補助金をもらって木を切るには難解な制度の解読が必要。かといって作業方法を変えると補助金が出ない。こういった事情により林業が衰退した地域が多い
所感メモ
本書を選んだ理由
気候変動について学んでいく過程で、「森林」が果たす役割がかなり大きいと知ったことで改めて「森林」について学んでみたいと思いました。
森林が放置される
おそらく本書の主題①となる内容だと思います。
- 日本には植えたものの伐採されずに放置されている森林がたくさんある
- その要因として林業の衰退がある
- 建築基準法により伝統的な木造建築ができない
といった感じです。
最近の数値を見ると、木の蓄積量は1995年の35億m3から2002年の40億m3へと、7年で5億6000万m3も増加し(引き算の結果と一致しないのは四捨五入の丸め誤差による)、統計上は毎年8000万m3ずつ増え続けていることになる。
(中略)
世界の問題が「木を切りすぎる」ことならば、我が国の森林問題は「木を切らなすぎる」ことであろう。ちなみに2005年の我が国の木材総需要量は丸太換算で約8700万m3で、近年およそ9000万m3前後を推移している。我が国は世界有数の丸太消費国だが、その数字だけみれば、森林資源を減少させず、国内で毎年自然に育つ増加分だけで、莫大な国内需要量をまかなえそうなくらいだ。
(中略)
しかし、木材自給率はたったの二割である。国内の素材生産量(木の生産量)は1967年の5200万m3をピークに、その後、ずっと減り続け、2005年には1600万m3にまで落ち込んでいる。国内資源の扱いもままならないまま、海の向こうから、木材を大量に輸入しているのだ。
『森林の崩壊』P.14-15より引用
本書は2009年の本ですので多少実態は変わっているのかもしれませんが、一度内容に沿って書いてみます。
何となく印象として「森林が減っている」という印象がありますが、日本に限って言えばその逆で森林は増え続けているということです。さらに付け加えるなら、手入れがされず「放置された森林」が増え続けているようです。
国内需要を賄えるだけの森林が存在しているにもかかわらず、国内の森林は伐採されずに放置され、その代わりに海外から全体の8割近い木材を輸入しているのが日本の木材市場の現実ということですね。
林業と伝統木造建築の衰退
残り2つの問題ですが、まずは林業の衰退について
国の補助金制度が林業の現状と噛み合っておらず
- 補助金の制度が複雑でまずはその解読が必要
- 補助金をもらって植林・伐採ならその土地の性質にそぐわない方法を強いられる
- かといって作業内容を変えると補助金は下りない
超簡単にいうとこのような状況が説明されています。
これによって「状況を改善しよう」「林業を立て直そう」「森林を守ろう」という様な気概を持って取り組む事業者が減りつつあるということのようです。
続いて、伝統的な木造建築ができない状況について
日本では、
- 日本の気候で育った木を使い
- 日本の地理的条件の中で発展してきた工法で
- 日本の環境に適した建築をする
この方が良いとされています。
日本の環境に適応して発展してきた建築物であれば、
- 地震でも倒壊せず
- 夏には涼しく冬には温かく
- 耐用年数は百年にも達する
など、さまざまな「日本に適した」メリットがあるようです。
しかし、その伝統木造建築ですが、現在は国の「建築基準法」によって阻まれ、建てることができなくなっているそうです。
伝統構法による木造建築は、縦横に木が組まれた骨組みが基本であり、壁の強さ、壁の量が重要視される建築基準法では蚊帳の外だ。そもそも構造に対する考え方が異なっている。
『森林の崩壊』P.137より引用
そして、その建築基準法は戦後の国内情勢に合わせて制定されたものであり、今となっては実態に即さないものになっているとされていました。
建築基準法はそもそも、戦後のバラック建築を規制するためにできた法律と聞く。バラックを規制する線を引いたら、バラックぎりぎりのラインでしか建築できない職人とその建築を大量に作り続けてしまったのかもしれない。
(中略)
意識や技能レベルが低い業者を取り締まるため、最低レベルの底上げをねらった画一的な規制が強化されている。その結果、高い技能を持った技術者を阻害し、施工に対する誠意を削ぎ、平均的な職能もますます低下する可能性がある。さらに質の悪い施工者を増やすことにもなりかねない。職能の差を問わずに安全性を確保しようとするあまり、高い技能や伝統的な構法が排除されてきた。
『森林の崩壊』P.150より引用
バラック規制が目的だった基準が今もそのまま残っているというのもなんとも日本らしい話ではありますが、この状況が続くなら日本の伝統的な構法は消滅してしまうかもしれない、という状況に置かれているようです。
発展を考える
2009年の本だったので
読んでから気づきましたが、こちら2009年に発行された本でした。
既に17年が経過しているわけです。(2009年が17年前という事実に驚愕しますが…)
その間に本書で提起されている問題は何か一つでも改善に向かっているんでしょうか?
- 国産材が使われない
- 林業の衰退
- 伐採されず放置された森林
- 伐採作業中の事故
- 建築基準法での木造建築弾圧
などが本書で挙げられている問題点になるかと思いますが、ぱっと思いつく印象としては現在までで何かが変わったという様な気はしませんね。
では、実際どうなのか調べてみよう、と思ってもそれこそどこから手を付けていいか見当がつきませんので、ひとまず同著者の次作を読んでみようかと思います。
関連する読書メモ
・『森林に何が起きているのか』
同じく「森林」についての本ですが、こちらでは気候変動や人間の開発によって変化する森林の現状についても扱われています。また、この本でも「日本は森林資源が豊富だが放置され、森林が荒れ果てている」という記述が出て来ていました。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- 木材
- 伝統木造建築
ひとこと
何度か書きましたが、「森林」についての本というよりは、林業を取り巻く社会情勢に関する問題提起の本でした。
日本の林業が問題を抱えていることはとてもよく伝わってきました。しかし、では「自分が林業に携わるか?」「木造建築を立ててもらって住むか?」と言われると…なかなか悩みどころではないでしょうか。難しいですね。