「気候変動」について知りたいと思い、その一環として本書を読みました。
本書では、氷河・氷床の性質や研究の歴史、今後の予測といった内容が提示されています。「気候変動」と「氷河」はセットで表れることも多いので、氷河についていることも重要でしょう。
今回は『南極の氷に何が起きているか』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

- 著者
- 杉山慎
- 訳者
- -
- 出版社
- 中央公論新社(中公新書)
- 発行日
- 2021年11月18日
この本について
どのような本か
ジャンル
自然科学
テーマ
氷河・氷床の知識、研究の歴史について学び、気候変動による今後を考える
どんな人に向いているか
- 氷河や南極について知りたい人
- 気候変動について知りたい人
注目した要素
- 1
氷河・氷床
溶け残った雪が積み重なって氷となり、それが自身の重みで流れ出したものが「氷河」。大陸規模で氷の覆われている南極とグリーンランドの氷河は「氷床」と呼ばれる - 2
棚氷
棚の様に海に張り出し、底面が海面と接している部分が「棚氷」であり、南極のの氷の12%を占める - 3
氷の減少
IPCCの2019年の発表では、1992年以降の24年で2500ギガトン(平均で毎年100ギガトン(海水準相当0.3mm))の氷を失ったとされている。これは南極氷床全体量の1万分の1に相当する
所感メモ
本書を選んだ理由
「気候変動」について知りたいと思い、その一環として本書を読みました。
気候変動の話が絡むと高頻度で温暖化と関連して「氷河の消滅」「海面上昇」などの内容に遭遇するため、「氷河」をはじめとした氷について学びたいと思ったことが要因です。
「氷河」と「氷床」
まず、先述の通り今回は気候変動から「氷河」について学びたいわけですが、その定義自体が曖昧でしたので、本書の内容を使って整理しておきます。
該当の説明を引用してみます。
(前略)毎年の残雪がどんどん積み重なって、やがて氷になる。氷が十分に厚くなれば、自らの重みでゆっくりと流れだす。これがいわゆる「氷河」である。
(中略)
夏に溶けるよりも多くの雪が降る場所で、氷河は成長する。世界を見渡せばそのような地域は意外と多く、南極の他にも、北極のグリーンランド、スヴァールバル諸島、アラスカ、カナダなどにたくさんある。中低緯度では、ヨーロッパアルプスやヒマラヤの山岳地帯、南半球のパタゴニアやアフリカの高山など、さまざまな地域に氷河が分布している。
『南極の氷に何が起きているか』P.4より引用
引用部の繰り返しになりますが、氷河とは「溶け残った雪が氷となり、やがて自重で流れ始めたもの」ということですね。「氷の河」と書くわけですので、イメージ通りですね。
続きまして「氷床」という言葉もはっきりさせておきます。
陸上に蓄積された雪が氷となって、ゆっくりと流れるものが氷河である。その一歩いうで、南極で大陸を覆う氷は南極氷床と呼ばれる。「氷床」は、氷河とは何が違うのか。
説明の前に、宇宙から地球を眺めた写真を見てもらいたい。際立って白く広がる南極大陸と北極のグリーンランドが目に入るはずだ。これらふたつの大陸は、大陸規模で氷に覆われており、そのほか数多くの氷河と比較してもけた違いに大きい。また、氷にかたちも、谷を河のように流れる「氷河」というより、むしろ陸地を覆う床のように見える。そのため、南極とグリーンランドの氷河は別格扱いとして「氷床」と呼ばれるようになった。
『南極の氷に何が起きているか』P.10より引用
「宇宙から地球を眺めた写真」は引用していないのでピンと来ないでしょうが、気になる方は直接本書にてご確認ください。
何にしても、氷床とは「南極とグリーンランドを覆っている巨大な氷河」ですね。
そして、この「氷河」「氷床」についての(おそらく)基礎となるであろう考え方がありました。
「涵養(かんよう)」と「消耗」です。
- 涵養:増える・成長すること
- 消耗:減る・なくなること
そして、これらを用いて示される氷河の収支を計算する式が
質量収支=涵養量-消耗量
P.8より
増えた分から減った分を減算してプラスかマイナスかを見る、当たり前ではありますが「氷河でもこういった考え方をしているんだな」と知ることができるのは重要だと思います。
機構を特徴づける降雪と気温が、それぞれ「雪が溜まって氷が成長する」「氷が溶けてなくなる」というふたつのプロセスをコントロールして氷河の質量収支が決まる。氷河の変動が、気候変動の指標として注目されるのはそのためである。
『南極の氷に何が起きているか』P.8より引用
失われている氷
本題です。
気候変動に関する本を見ると高確率で「氷河がなくなっている」という記述を見ると思います。
本書では、氷河についての研究の進歩についてもかなり取り上げられており、ここでは詳しく取り上げませんが、割と近年まで「氷河の減少を定量的に捉える技術が未発達だった」というようなことが述べられており、個人的にかなり意外に思いました。
これを前提として、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が発表した「20世紀に氷床がどう変化したか」についての報告の変遷を簡単にまとめると
- 2001年:20世紀の100年で氷床が拡大し、海水準-20~0mm低下(信頼度:低)
- 2007年:海水準変動は-12~23mm
- 2013年:海水準変動は1~3mm(強い確信)
この流れからわかる通り、21世紀初頭では研究手法が未発達であったために「氷床がどういう変化を遂げたかを説明できなかった」ということになります。
そのため、現代人の認識とは反対に「氷床が拡大している」という発表がされていた。
そして、研究の進歩によって徐々に「氷河減少(=海水準プラス側)」へと流れていく、という変化を取った。
地球温暖化についての報道を見ていると「もっと早く何とかできなかったのかよ…」と勝手ながら思ってしまうこともありましたが、そもそも「氷河が危機的状況に置かれていること自体、最近になるまでわかっていなかった」ということだったようです。
というより、研究者たちは体感として分かっていたとしても「科学的な根拠をもって説明することができなかった」が正しいのかもしれません。
二〇一九年にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表した「変化する気候下での海洋・雪氷圏に関する報告書」によれば、一九九二年から二〇一六年までの二四年間に、南極氷床は二五○○ギガトンの氷を失っている。いくつもの独立した研究成果にもとづいたこの数字は、現在の南極氷床が縮小傾向にあることをはっきりと示している。
『南極の氷に何が起きているか』P.35より引用
他にも、今後氷河の減少がどんな影響を及ぼすかについても書かれていますが、それについてはもっと「過去の気候変動」について学んでから改めて取り上げることとします。
発展を考える
引き続き「氷河」を学んでいく
南極や氷河について取り上げた本の1冊目でした。
個人的に本を読んで何かを学ぶのであれば、同じような内容を取り扱った本を何冊も読み比べることが必須だと考えています。
久々にこの名前を書きますが、「シントピカル読書」の仲間みたいな読み方ですかね。
例えどんなに内容の網羅性が高く、素晴らしい内容であったとしても1冊を妄信するような読み方はすべきでない、のかなぁと考えています。
…というわけで、引き続き「氷河」「氷床」などの本を探して読んでいく予定です。
「南極」もテーマとして面白そうですし、教養として有益(ちょっと嫌な言い方ですが…)ですので、いずれ深掘ってみたいですが、いったん優先でおは低めで。
「氷」や「気候変動」を中心に引き続き追ってみようかなと思います。
関連する読書メモ
・『温暖化で日本の山に何が起こっているのか』
ブログ記事では取り上げていませんが、山の氷河に関する記述がありました。「氷河」というとどうしても南極、北極が連想されますが、山の氷河も周辺の生態系や周辺の住民の生活に関係しています。
・『天変地異の地球学』
直接内容に関係はありませんが、「ミランコビッチサイクル」「ウィルソンサイクル」「火山噴火」など、温暖化⇔寒冷化のサイクルについてざっと学べます。未来のことを考えるには過去を学ぶのが有効です。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- 氷河
- IPCC
ひとこと
「南極の氷」についての本ではあるのですが、思いがけず「南極」そのものについての知識も得られました。
研究の歴史や南極調査の実態(軽くですが)、南極の地理など薄く広く読めるので、南極に興味がある人にもいい本かもしれません。