「水」を考える一環として「地下水」について学ぶため本書を読みました。
本書では、地下水について広く浅く学ぶことができます。
2009年出版の古い本ではありますが、地下水の入門書としてかなり良い一冊ではないかと思いました。
今回は『見えない巨大水脈 地下水の科学』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

- 著者
- 日本地下水学会、井田徹治
- 訳者
- -
- 出版社
- 講談社(ブルーバックス)
- 発行日
- 2009年05月21日
この本について
どのような本か
ジャンル
自然科学
テーマ
「地下水」についての基礎知識を知る
どんな人に向いているか
- 地下水について学びたい人
- 地下水入門者
注目した要素
- 1
地下水の価値
平均すると地下水はおよそ600年ですべてが入れ替わる。場所によっては石油と同じ「一回限りの資源」 - 2
地下水の循環
涵養・流動・流出。雨として地面に浸透し、揚水や流出によって河川と通じて海へ。そしてまた雨として地面へ戻る - 3
窒素汚染
化学肥料由来の硝酸性窒素による地下水汚染問題が存在する。吸収されたなかった窒素が地下水に溶け込む
所感メモ
本書を選んだ理由
「地下水」について学ぶ一環として読みました。
地下水についてはまだまだ知識がないため、入門に向く本が無いかと思いブルーバックスのラインナップから探した結果として本書を見つけました。
地下水について
本書での地下水についての基礎知識を残しておきます。
まず、「地下水の寿命」についてですが、地域によって降水量が違うため差はあるでしょうが、平均すると約600年で地下水がすべて入れ替わるとされています。
(前略)一か所にとどまっている湖沼の水は全部が入れ替わるのに膨大な時間を要するのに対して、同じ淡水でも、地上を流れる河川の滞留時間は短い。地下水の場合、滞留時間とは、最初に雨として地上に降り注ぎ、地下水となったのちに、湧出するまでの時間のことであるから、いわば地下水の一生の長さ、「寿命」のようなものである。地下水の流動の状況は場所によって大きく違うが、平均すると地下水は約六○○年ですべてが入れ替わる、ということになる。つまり、「平均寿命」は六○○歳というわけだ。
『見えない巨大水脈 地下水の科学』P.20より引用
そして、この地下水の入れ替わりを作りだしている仕組が
- 涵養:雨として降った水が地下に浸透して地下水となること
- 流動:地下をゆっくりと移動
- 流出:湧水として河川に流れ込む、人間に組み上げられる等
これらの3段階で構成されているとされています。
この「入れ替わり」の仕組みは地域によって異なるため、「地下水の寿命」も当然地域によって異なることとなります。
そのため、寿命の長い(=涵養に時間がかかる?)地下水は、石油と同じように「一回限りに資源である」と言えます。
(前略)さまざまな理由で涵養量が少なくなったり、くみ上げなどによって流出量が増えたりすると、当然のようにその場所の地下水の貯留量は減少し、やがて枯渇してしまう。
(中略)
だが、地下水の貯留量を大きく変えるのは、さまざまな人間の活動である。地上で最も重要な資源である地下水と、人間がどう関わるかで決まるのである。
忘れてはいけないのは、地下水にはこのように、何万年も前に降った水を起源とするものまであるということである。はるか昔に降った雨が溜まった地下水とは、いわば非常に「高齢」なのであり、その意味では石油と同様に、一回しか使えない資源である。
『見えない巨大水脈 地下水の科学』P.23-24より引用
日本はモンスーンの影響下にあり降水量が多いため、比較的地下水の涵養が早いという内容はどこかで読んだことがありますので、特別意識しない場合も多いのでしょうが、「どれだけくみ上げて良いのか」は難しい問題だと思います。
地下水に関しても持続可能性を考えないといけないようです。
窒素汚染
続いて地下水の「汚染」についてです。
農業で用いられる化学肥料(窒素肥料)に由来する「硝酸性窒素」による地下水の汚染は全国的にかなり深刻であるとされています。
仕組を超簡単にまとめると
- 窒素肥料がまかれる
- 土壌中の微生物などにより、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素へと分解される
- 植物は硝酸性窒素、アンモニア性窒素として窒素を吸収
- 吸収されなかった窒素が土壌中にアンモニア性、硝酸性、亜硝酸性として残留
- 降水の浸透で帯水層に運ばれる
- 地下水に溶け込む
本書は2009年に出版された本ですので、現在は何かしら対策が講じられて改善しているのかもしれませんが、「肥料はまけばいいというものではないんだ」程度には覚えておきたいと思います。
(前略)近年、農薬を使わない有機栽培が人気になり、化学肥料の代わりに堆肥や動物のフンなどからつくられた有機肥料が使われることが多くなった。だが大量の有機肥料を畑にまくと硝酸性窒素による地下水汚染を招くという点では、化学肥料とあまり変わらないともいえる。
『見えない巨大水脈 地下水の科学』P.200より引用
「無農薬」は野菜のブランディングとして有効かもしれませんし、その野菜も安全かもしれませんが、生産地の地下水には汚染物質を送り込んでいるかもしれないと、自然由来だから良いというわけではないと認識しておきたいです。
発展を考える
「固定」という考え方
最近、「固定」という考え方が目に付く機会が増えてきました。
- 炭酸カルシウムが海底に固定される
- 炭素が木材として固定される
- 窒素が人間によって固定される
等、特定の元素が「固定」されることに言及される内容に気づきました。
本書では三番目の窒素の固定について記述がありましたので引用してみます。
1908年、ハーバーボッシュ法の発明によってアンモニアを生成できるようになり、窒素肥料を大量生産できるようになった、という内容に続きます。
だが、一方で、本来は大気中にあって安定な窒素が人間によって固定されることで、地球上の窒素の循環の様子は大きく変えられ、地球の環境にも多大な影響を与えるようになった。その代表的な例は、湖沼や閉鎖性水域の富栄養化だが、窒素肥料の大量使用が主な原因となった硝酸性窒素による地下水汚染も、その悪影響の一つである。
『見えない巨大水脈 地下水の科学』P.196より引用
- 放出しすぎた元素を「固定」して減らす
- あるべき元素が「固定」されて偏る
など、さまざまな「固定」の形がありそうです。何かを考えるときにこの「固定」の考え方を自然に持ち出せるようになるといいなと思いました。
関連する読書メモ
・『地下水と地形の科学』
同じく地下水についての本です。内容に関して本書とかなり似通っています。ただ、こちらは入門としては若干読みづらい部分もありましたので、本書の次にこの本を読むのがいいかもしれません。
・『モンスーンの世界』
日本の地下水を考えるのであれば、「モンスーン」の影響は必要になるかと思います。
・『森林に何が起きているのか』
炭素を木材として「固定」するという内容が出て来ました。個人的にかなり印象に残った本でしたので残しておきます。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- 肥料
- 窒素
ひとこと
冒頭にも書きましたが、地下水の入門書としてはかなり良い一冊なのではないかと思いました。
何せ地下のことであり、なかなか調査が難しい分野ではあるのだと思いますが、少しずつ学んでいきたいと思います。