その山を見上げて

読書と思考を積み上げていきます。

『森林で日本は蘇る』──林業と木造建築の現状

最近読んだ同著者の『森林の崩壊』の派生として本書を読みました。

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本書でも引き続き林業や伝統木造建築の現状についての話題の他、各国の建築やバイオマスについての話題も取り上げられていました。

今回は『森林で日本は蘇る―林業の瓦解を食い止めよ―』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

書籍情報
『森林で日本は蘇る―林業の瓦解を食い止めよ―』の書影
『森林で日本は蘇る―林業の瓦解を食い止めよ―』
著者
白井裕子
訳者
-
出版社
新潮社(新潮新書)
発行日
2021年06月17日
※書影は出版社公式サイトより引用
目次

この本について

どのような本か

ジャンル

社会

テーマ

林業、建築といった森林や木材と取り巻く社会情勢を考える

どんな人に向いているか

  • 林業の現状を知りたい人
  • 伝統木造建築について知りたい人

注目した要素

  1. 1

    在来木造(工法)と伝統木造
    建築基準法に沿った「在来木造(工法)」と、昔からの経験や技術からつくられる「伝統木造」

  2. 2

    文化の違い
    フランスやドイツは都市計画に基づき歴史的な街並みを残す。日本の建築基準法は「最低基準」を定めているに過ぎない

  3. 3

    林業機械
    海外ではハーベスタ、プロセッサ、フォワーダという林業機械が活躍している。日本も購入したが、地理的条件の違いから持て余している

所感メモ

本書を選んだ理由

前作となる同著者の『森林の崩壊』の続編として本書を読みました。

『森林の崩壊』自体がそれなりに古い本でしたので、アップデートがあるかもしれないと思ったことも要因です。

在来工法と伝統木造

前作の『森林の崩壊』に引き続き、本書でも日本の建築基準法で伝統木造建築ができないという内容が取り上げられています。

現在、我々の身近にあって「木造建築だ」と思っている建物は、著者が「在来木造」と呼ぶものであり、昔からの知識や経験からつくられる「伝統木造」とは異なるとされていました。

  • 伝統木造:土台を設けず柱脚を礎石に載せる、金物を使わず「木組み」、土塗り壁・板張りの全面壁・小壁、丸太や製材など天然乾燥木材を多く使う
  • 在来木造:コンクリート基礎に土台・柱脚を金物で固定、柱と横架材の接合部を金物で固定、筋かいや構造合板・石膏ボードを壁として用いる、人工乾燥木材・合板・修正罪など木質工業製品を多く使う

そして、在来木造は「在来工法」であり、これは建築基準法に記載された工法に従って建てられた建築物であるとのことです。

「在来工法」とは、文明開化で導入された洋風木造を土台に、「お上」の権威のもとに体系化された「官」の技術である。

「伝統木造」は、昔からの経験や技術の蓄積をもとに大工棟梁が培い逐次新しい様式や技術を旺盛に取り入れながら徐々に発展を遂げたいわば「民」の技術である。

「在来工法」は、「伝統木造」とは似て非なるものである。

『森林で日本は蘇る』P.22より引用

「伝統木造」で建てられた建築物は、耐震性に優れており、「在来工法」の建物が倒壊する横で「伝統木造」の建物は倒れることなく建っていた、という実験結果もあるようです。

また、耐用年数もコンクリートの建物より長いとされています。

 形あるものは、いずれ壊れる。自然の脅威に完璧な建物などない。耐震性が高いなら、厚いコンクリートの塊の中で暮らしても構わないと思う方は、どれだけいらっしゃるだろうか。しかしながら、最近コンクリート構造物の劣化が問題になっており、一方で古代の木造建築がいまだに建っていることからも分かるように、高い技能で建てられた木の構造物は、コンクリートの構造物より耐用年数が長い。

『森林で日本は蘇る』P.24-25より引用

こういった事実はありつつも、日本では伝統木造は建築基準法を満たすことができず、建てられなくなっているという現実が指摘されています。

そして、実際にこういった伝統的な建築が行われなくなってしまえば、その技術も急速に失われてしまうのでしょう。

今後、建築基準法がどうなっていくのかは分かりませんが、日本古来の建築技術をどのように残していくかは課題となっているようです。

”自国の文化”を大切にする海外の例

自国の伝統的な建築技術を蔑ろにしてしまっている日本との対比として、自国の文化を大切に残していこうとしている海外の事例が紹介されていました。

フランスやドイツでは、歴史的な街並みを保存しようとする様な「都市計画制度」に基づいて街づくりがされているそうです。

対して日本の「建築基本法」は”最低限の基準”を定めてものであり、ここに価値観の差が表れていると言えそうです。

 フランスの景観は「建築に関する法律」が示す、根本的な「考え」によって、「形」を表している。フランスやドイツの歴史的な町並みは、気がついたら残っていたのではない。そこには明確な国家の意志と国民の思いがあり、その意図が都市計画制度に作り込まれているからである。

(中略)

日本の建築基準法は「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保存を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする」と始まる。

 つまり我が国の建築のほうは「最低の基準」を定めたものだ。安全や防災などの観点から、建築物が、せめて最低のラインはクリアするよう規制していると言ってもいい。

『森林で日本は蘇る』P.44-45より引用

そもそも、建築基準法は戦前のバラックを規制するために作られたという話でした。

戦後の「まずは国を立て直さなくては」という状況で、”最低限”を基準として定めるというのは決しておかしなことではないと思います。

しかし、それを戦後80年が経過した現在でも当時と同じ内容のまま維持していくというのは無理がある、というのも分かるような気もします。

「文化」、「歴史の保存」などと言っている余裕のなかった状況からは今からでも脱していくことを考えていかないといけないのかもしれません。

発展を考える

建築の知識はもっておくべきか?

「森林」に関心をもって調べていますが、そうすると

  • 森林→木→木材→建築

とつながるルートが存在するため、建築についても少し知っておいてもいいかもしれないと思いました。

実際、現代社会で建築物と接することなく生活することなど不可能ですし、教養程度に調べてみます。

ただ、漠然と「建築」と言っても範囲が広すぎて途方に暮れてしまいますので、まずは”概論”的な内容を見てみようかと思います。

関連する読書メモ

・『森林の崩壊』

同著者の前作です。ほぼ同じ内容を取り扱っていますが、今回と比べると補助金制度についての記述が多いように感じます。

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・『エネルギーを選びなおす』

この本でも「日本のバイオマスがうまく機能していない」という様な記述があります。木を燃料とする木質バイオマスは、うまく利用できている国では廃熱を利用して「熱」を供給するコジェネを取り入れているという内容が共通です。

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気になった言葉

後日調査したらリンクを追加予定です。

  • 建築基準法

ひとこと

前作にも増して「建築」についての内容が増えており、建築についてほとんど知識のない身からすると理解できない部分もありました。

ただ、日本の林業・建築業界・制度がどんな問題を抱えているかを見渡せるのは良いと思いました。何か自分にできることが無いか考えてみたいと思います。