その山を見上げて

読書と思考を積み上げていきます。

『日本海 その深層で起こっていること』──「炭鉱のカナリア」日本海

「気候変動」を考える中で「日本海」の存在が日本の気候に与えている影響の大きさを知り、本書を読みました。

本書では、日本海調査の歴史や海中で起こっていること、日本の歴史との接点といった内容が示されていました。

ここでは、目に留まった要素を残しておきます。

書籍情報
『日本海 その深層で起こっていること』の書影
『日本海 その深層で起こっていること』
著者
蒲生俊敬
訳者
-
出版社
講談社(ブルーバックス)
発行日
2016年02月19日
※書影は出版社公式サイトより引用
目次

この本について

どのような本か

ジャンル

自然科学

テーマ

日本海の調査、海中で起こっていること、歴史、気候変動の影響など日本海について知ること日本人が受けている恩恵に気づく

どんな人に向いているか

  • 日本海について知りたい人
  • 日本の気候について知りたい人(その構成要素として)

注目した要素

  1. 1

    日本海の循環
    冬季季節風(モンスーン)と対馬暖流により海水の循環が起こっている。併せて、海底の地形的特性により水産資源が豊富

  2. 2

    日本海固有水
    水深200~300あたりで急激に温度が下がる。また、これ以降の水温0~1℃の海水の塩分はほぼ均一であり、酸素濃度が極めて高い。

  3. 3

    海洋の「炭鉱のカナリア」
    日本海内でも”熱塩循環”が存在し、地球全体の海洋循環の”ミニチュア版”としてみることができる。

所感メモ

本書を選んだ理由

気候変動について学ぶ中で日本の気候についても学び、「日本海」が日本の気候に対して与える影響の大きさを知りました。

そのため、「これはもっと日本海について知らなきゃいかん」と思い、本書を読みました。

日本海の循環について

少しずつですが、地球科学や海洋について学んできたこともあり、こういった内容が真っ先に目についてしまいます。

日本海は地図を見ても分かる通り、かなり閉じた地形になっています。しかし、そんな地形の日本海のなかでも海水の循環が起こっていると言います。

その循環を起こす要素となっているものを挙げていくと

  • 対馬暖流の流入
  • 冬季季節風(モンスーン)

これになりそうです。そして、循環の仕組みを簡単にまとめてみると

  1. 対馬暖流が比較的塩分の高い海水を供給
  2. 冬季季節風によって表面の海水が冷やされる
  3. 周辺の海水の塩分がさらに高まる
  4. 塩分が高まり密度が増加した海水が深層に向けて沈み込む
  5. 沈み込んだ分を補うため、深層から表層へ水が湧き上がる

この循環によって日本海の海水がかき混ぜられていることになります。

これは地球規模で見た際の”海洋循環”の仕組みそのものと言えそうです。そのため、日本海は海洋版の「炭鉱のカナリア」として捉えることができるとされています。

日本海は地球全体の海の「ミニチュア版」と言える存在であるため、日本海を観察することで海洋全体に起こっていることを推測できるということですね。

海底での循環の話もありましたが、ここでは取り上げないことにします。ぜひ直接本書を読んでみてください。

日本海固有水

日本海の深層には「日本海固有水」と呼ばれる、特徴的な海水が存在するようです。

説明を引用してみます。

 第一に、日本海の水温は深さとともに表面から急激に低下し、一気に冷たくなることがわかりました。一般に、海水の温度はどこでも深くなるにしたがって低下しますが、日本海では、その勾配がものすごく急なのです。表面では16℃くらいある水温が、水深200~300メートルで早くも1℃以下になり、深度1000メートルでほぼ0℃に到達します。それより深い部分では、ほとんど変化しません。

 水深200~300メートルから下にある水温0~1℃の冷たい海水は、化学分析の結果、塩分もほぼ均一であり、酸素濃度が極めて高いことが判明しました。

『日本海 その深層で起こっていること』P.68より引用

ここから日本海固有水の特徴を抜き出すと

  • 水深が下がると急激に水温が下がる
  • 水深200~300メートル以下の海水は塩分が均一
  • 水深200~300メートル以下の海水は酸素濃度が極めて高い

といったものですね。

そして、この固有水を作っているのは先程の「日本海の循環」であるとされています。

  1. 表面付近で植物性プランクトンが光合成によって酸素を作りだす
  2. 表面海水の沈み込みが発生
  3. 深層まで酸素が供給される

こういったからくりですね。

ただし、ここ最近は地球温暖化の影響による水温の上昇のためか、海水の沈み込みが弱まり深さ2000メートル以下まで届くような沈み込みが起こっていないという研究結果が出ているとされています。

ただ、日本海の酸素濃度の変化の歴史を辿ると、一時的に酸素濃度が低下しまた回復する、というサイクルが存在し、平均すると酸素濃度は一定を保っていたようです。

しかし、産業革命以降明らかにそのサイクルは崩れ始めており、酸素濃度は減少し続けているという研究結果が示されていました。

これが続いていけば、せっかくの「日本海固有水」もその特性を維持できなくなってしまうのかもしれません。

発展を考える

海流について調べたい

今回は日本海に流入する”対馬暖流”が重要な役割を持っていました。

今まで学んできた海洋循環や海流付近の大陸の気候、気象など様々な分野で海流は重要な要素を担っていました。

そのため、海洋の循環と合わせて「海流」についても知識を深めていけたらと思いました。

世界各地の海流に着目した本があればいいのですが、軽く調べた感じ見つかりませんでしたので、まずは「海」に関する本を読み漁って海流に関する記述を集めていくことが重要かなと思っています。

また、マグロやカツオが黒潮に乗って日本近海にやってくるという様な話は耳にしますので、海流についての調査は海洋生物についての知識にもつながってくるかもしれません。

関連する読書メモ

・『謎解き・海洋と大気の物理』

海洋循環やモンスーン、エルニーニョといった海について調べると必ず出会うことになる現象について素人でも分かるように説明してくれています。「海」や「気象」といった内容の入り口としてとてもいい本だと思います。

bookandthink.com

・『モンスーンの世界』

少々難しいですが、モンスーンの成り立ちや影響、モンスーン影響下で生きる人びとの自然観や文化についても言及されている本です。日本海とも密接な関係にある内容ですので、併せて読むといいかもしれません。

bookandthink.com

・『日本の気候5000万年史』

日本列島の形成から現在の気候ができるまでの過程などを追うことができる本です。この本を読むだけでも、ヒマラヤ・モンスーン・日本海という3つの存在がどれだけ日本の気候に大きな影響を与えているかがわかります。

bookandthink.com

気になった言葉

後日調査したらリンクを追加予定です。

  • 熱塩循環
  • 海流

ひとこと

日本海が持つ特性を広く学べる面白い本でした。

「地球上で起こっている海洋循環のミニチュア版である日本海」という概念を持っておくと今後海について学ぶ上でも有効に働きそうです。

また、本ブログ記事では書いていませんが、日本の気候への影響についても取り上げられていますので、そういった目線でも勉強になると思います。