「植物」について調べたいと思い、手始めに馴染み深い「野菜」について取り扱った本書を読みました。
本書では、野菜を使った食文化や著者の体験、伝搬・品種改良の歴史といった視点で野菜についての話題が展開されています。
今回は『世界の野菜を旅する』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

- 著者
- 玉村豊男
- 訳者
- -
- 出版社
- 講談社(講談社現代新書)
- 発行日
- 2010年06月17日
この本について
どのような本か
ジャンル
植物、歴史
テーマ
食文化や伝搬・品種改良の歴史などの話題から野菜について学ぶ
どんな人に向いているか
- 野菜について知りたい人
注目した要素
- 1
野菜の伝播
その土地の食文化に根付いている野菜も原産地は別にあることが多い。その国の食文化と結びついて伝統文化の様に定着することもある - 2
品種改良
我々が食べている野菜は品種改良が繰り返されてきたもの。同じ野菜でも国によって想像される姿が違うこともある - 3
気になった野菜の話題
立ちキャベツ、ジャガイモの伝播、トウガラシと好み、サトイモとコメなど
所感メモ
本書を選んだ理由
最近、木や古植物の話題を目にすることがあった関係で植物について調べてみたいと思いました。
そのため、まずは身近に存在する「野菜」に関する本を読んでみようと思いました。
伝播と品種改良
本書の主題であろう内容です。
日本で一般的に出回っていて、普段から私たちが口にしている野菜も日本原産ではない場合が多いということです。
本書で挙げられている野菜を一部取り上げてみても
- キャベツ
- レタス
- ジャガイモ
- トウガラシ
- ナス
- ニンジン
どれも馴染のある野菜ですが、どれも原産地は別にあります。
また、その野菜も伝わる過程で人間の味覚やその土地の食文化・気候に合わせて違った品種改良を受けて別の姿を取っていることもあるようです。
トウモロコシの例ですが、「トウモロコシができるまで」の考察についての内容を引用してみます。
今日のトウモロコシのもとになったとされる植物は、世界中の学舎が血眼になって探しているにもかかわらず、これが原生種だと誰もが納得するようなものはまだ見つかっていない。
が、おそらくは、ある特定の地域でひとつの原生種が改良されて栽培化の道筋がつくられた、というような話ではなく、中米から南米にかけての広汎な地域で、数千年という単位の気の遠くなるような時間をかけて、自生する多くの野生種がたがいに交雑して何度も変異を繰り返す中で、生き残った優良な形質が受け継がれ、さらに新たな変異を繰り返し……という具合に姿を変えていきながら、次第にアメリカ大陸一体に拡散していったと考える方が妥当なようである。
『世界の野菜を旅する』P.91-92より引用
こちらは、”トウモロコシ”の発祥に関する考察ではありますが、人間が「発見」して栽培化され、それが別の地域に持ち込まれ、それがまた別の地域に伝わり……と広がっていく過程でも同じことが言えるのではないかと思います。
交雑があったかはともかく、その地域に合った、人間の味覚に合った特性をもった種が生き残り時間をかけて進化・適応していって現在各地に存在する野菜に品種になったと。
「野菜」と言ってもそれぞれ歴史を持っておりとても面白いと思いました。
その土地の食文化と強く結びつく
そのようにして姿を変えながら原産地から世界中へ広がっていった野菜ですが、その伝播によってその国の食文化と強く適合し、まるでその国で伝統的に食べられていた野菜かのように馴染んでしまう例も挙げられています。
本書で取り上げられている例としては
- ジャガイモ:南米原産。16世紀にヨーロッパに伝わり寒冷な気候への適応力により普及。戦乱や飢饉のたびに作付面積が広がり「貧者のパン」として広まっていく
- トウガラシ:南米原産。15世紀にスペイン、16世紀にヨーロッパ各地に伝わる。アジアへはスペイン、ポルトガルから船で運ばれ伝わる。インドのカレー、韓国のキムチもトウガラシが伝わる前は辛くなかった
ドイツと言えばジャガイモを連想することも多いくらい食文化と強く結びついている例かと思いますが、ジャガイモは南米原産の作物です。
インドのカレー、韓国のキムチと言えばトウガラシが使われ「赤くて辛い」イメージがありますが、トウガラシもまた南米原産です。
このように、伝わった先の食文化と強く結びついてその国の伝統の一部のように溶け込んでしまう例もあるというのはとても面白いですね。
そして、よく考えてみたら日本でも「米」がその一例だと言えそうです。
本書でも以下のような記述がりました。
中国の雲南省あたりからインドシナ半島北部の山地を経てヒマラヤ南麓にいたる照葉樹林帯には、古くから固有の農耕文化とそれにまつわる儀礼的な習俗があり、茶、絹、ウルシ、麹を用いた酒の醸造など、日本人の生活文化の祖型が既に存在していた。
その照葉樹林文化といわれるものが、稲作が伝わる前の日本では、独自の工夫を加えた焼畑農業システムとしてかくりつされていたのである。
(中略)
つまり、すでに焼畑農耕文化が成立していたところへ、あとから稲作農耕文化が入ってきたのである。そして、ふたつの異なる文化が衝突し、闘争と妥協の紆余曲折を経た末、稲作派が勝利して、それ以来、日本は豊葦原瑞穂の国として、コメの文化と理論がすべてを支配する社会になっていったのだった。
『世界の野菜を旅する』P.191-192より引用
稲作、水田は何となく「日本の原風景」的に思いますが、それも結局は米が日本に伝わって来たことにより形成されたものということになります。(とはいえ、弥生時代から続くものですので”伝統”であり”原風景”であることに違いは無いでしょう)
日本の焼畑農耕文化についても調べてみると面白そうです。
発展を考える
『栽培植物の起源と伝播』を読んでみたい
本書では話題に上がった野菜に伝搬ルートがこの本から引用されていました。
最初、以前読んだことのある『栽培植物と農耕の起源』の誤植かと思ってしまいましたが、全くの別物でした。こちらは伝搬ルートに焦点を当てた本なのか?と思いますので、歴史と合わせて学ぶと面白そうです。
また別の機会にこの本も読んでみたいと思います。
関連する読書メモ
・『栽培植物と農耕の起源』
世界各地の農耕の手法とその文化を形作った作物についての本です。かなり古い本ですが、考えたかとして面白い内容が登場するので載せておきます。(本ブログの記事の内容に関連性があるかは微妙ですが)
・『砂糖の世界史』
砂糖を中心に歴史を眺める本です。イギリスに伝わり紅茶と出会ったことで、「イギリスの伝統」のようになりました。これもまた、伝播先の食文化と強く結びついた例と言えると思います。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- 『栽培植物の起源と伝播』
- ジャガイモ
- 砂糖
ひとこと
野菜についての本でした。
野菜は食文化と強く結びついていることもあり、各国の歴史や文化の変遷が何となく見えてくるように思います。
この系統の本も探してみたいですね。