「災害」について考える中で本書を読みました。
本書では、最終的に関東大震災へとつながる20世紀初頭の大災害と、その影響で日本社会がどのように動いたか、という視点が提示されています。
今回は『災害の日本近代史 大凶作、風水害、噴火、関東大震災と国際関係』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

- 著者
- 土田宏成
- 訳者
- -
- 出版社
- 中央公論新社(中公新書)
- 発行日
- 2023年7月20日
この本について
どのような本か
ジャンル
社会、歴史
テーマ
20世紀初頭の日本・世界の大災害による日本の情勢の変化を考える
どんな人に向いているか
- 災害史を学びたい人?
注目した要素
- 1
20世紀初頭の災害
プレー山噴火、東北大凶作、サンフランシスコ地震、中国の水害と飢饉、メッシーナ地震、関東大水害、桜島大噴火、東京湾台風、関東大震災 - 2
義援金への意識の変化
大災害の経験により、海外への義援金を贈ること、逆に海外から義援金など支援を受けることが定着していく - 3
支援外交の重要性
日本が災害の多い国だからこその外交の仕方を考える必要がある。今後、南海トラフ地震の発生時は海外から支援を受けることになることを覚えておかなければならない
所感メモ
本書を選んだ理由
日本が経験した「災害」について知りたいと思い本書を読みました。
社会が動くような規模の災害とその要因を知ることができたらいいなという考えで「日本近代史」とタイトルになる本書を選びました。
災害と義援金の定着
本書で取り上げられている20世紀初頭の災害を取り上げると以下の通りです。
- 1902年:プレー山噴火
- 1905年:東北大凶作
- 1906年:サンフランシスコ地震
- 1906~07年:中国中部飢饉
- 1908年:メッシーナ地震(イタリア)
- 1910年:パリ大洪水
- 1910年:関東大水害
- 1913年:桜島大噴火
- 1917年:東京湾台風
- 1923年:関東大震災
ここまで1902年~1923年の21年間にかなり災害が頻発していることが分かります。
この時代はまだ海外への支援を送ること、海外から支援を受けることが日本国内に定着しておらず、この20世紀初頭に発生した一連の災害によって海外に対して「義援金を贈る」という考え方が定着していったとされています。
- プレー山噴火発生時:義援の動きが起こる
- 東北大飢饉発生時:国内有力者への義援金募集、アメリカ・イギリス・清国からの支援を受ける
- サンフランシスコ地震発生時:アメリカへの外交上の支援の感謝により国内で24万6000ドルの義援金を贈る
- 中国中部飢饉発生時:対日ボイコット緩和を狙って下心満載の義援金をお送るが余り感謝されることは無かった
この辺りまででおおよそ義援金の文化は定着していたようです。
特に東北大飢饉の際にアメリカから受けた支援、サンフランシスコ地震の際にアメリカへ送った支援が大きな契機となっていそうです。
東北大飢饉の際の記述を引用してみます。
一九〇五年の東北三県を中心とする凶作が、収穫高が平年よりも六六~八七%も減少するという極めて深刻な歴史的凶作であったことは間違いない。それに加え、日露戦争の直後に発生したことが、国際的にも、国内的にも特別な意味を持った。
この時期、日本は世界の注目を集める存在になっていた。また当時、世界的に他国の災害に対する支援を行う動きが広がっていた。そのため一九〇五年東北大凶作に対して、世界各地から義援金が送られてきた。それは日本国民を感激させた。他国の災害に対する支援の意味や効果を日本は身をもって知った。
『災害の日本近代史』P.29より引用
そして、サンフランシスコ地震の際の記述ですが
サンフランシスコ地震から六日後の一九〇五年四月二十四日、西園寺公望内閣は閣議で日本赤十字社による義援金募集を決めた。天皇からは二十万円が下賜されることになり、二十六日には外相官邸に閣僚、松方正義日本赤十字社社長、渋沢栄一をはじめとする財界関係者も招き、義援金への協力要請がなされた。
日本側が熱心な支援活動を行った背景には、先に挙げた『東京朝日新聞』の社説での理由以外にも、日露講和の仲介などアメリカによる外交上の支援に対する感謝や、被災地となったカリフォルニア州を中心に起きている日本人移民排斥の動きへの対応など、さまざまな思いがあった。
『災害の日本近代史』P.33より引用
必ずしも支援と同情のためだけの義援金ではなかったのかもしれませんが、このあたりの出来事がきっかけとなり、海外の災害に対する支援の動きが日本国内に定着していくことになったようです。
日本の支援外交
日本はプレートの境目に囲まれた国であり、海溝型地震の影響を受けやすい地理的条件にある国です。
そのため、今後も定期的に災害に見舞われ続ける事になるのでしょう。(もちろんそれは日本に限った話ではありませんが)
災害外交だけで良好な関係は築けない。しかし、これは全ての外交に当てはまることだ。災害で被災した人びとに国境を越えて同情の気持ちを示し、支援を行うことは、それ自体に意味がある。
また、南海トラフ巨大地震など巨大災害の発生が予測されている現在、日本が大規模な国際支援の受け手となることも想定しておく必要がある。それは巨大災害に対する備えを強化するだけではない。支援を受ける立場になって考えることは、他国の災害を支援する際にも役立つだろう。災害多発国である日本だからこそ行える災害外交があるはずだ。
『災害の日本近代史』P.200より引用
東日本大震災はじめ、令和に入ってからも災害は頻発している日本です。
その際に海外から受けた支援を忘れず、逆に海外の災害にはその経験を生かした支援を行うことが必要だということでしょう。
我々も自分が受ける可能性のある災害に対しても、国外の災害に対しても自分のできることを考えていく必要があります。
発展を考える
求めていた情報はなかったが
「災害」について調べたいと思い本書を手に取りましたが、どちらかと言えば求めていたのは災害とその発生メカニズムに関する情報でした。
あくまで地学の一環として調べたかったわけですが、先ほどから書いている通り本書の内容としては「社会情勢の変化」でした。
本の構成としても、取り上げられた災害がどういったメカニズムで発生したどんな減少だったのか、が含まれていると良かったなとは思います。
ただ、先ほどのあった通り、今後日本でも南海トラフ地震の発生は予想されていますし、世界中でも災害がなくなることは無いため、知識として重要でしょう。
最近の大災害をテーマにした本も読んでみてもいいかもと思いました。
関連する読書メモ
まだありません。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- 関東大震災
ひとこと
災害は社会の意識が変わるポイントでもあるのだろうと思います。
「情けは人のためならず」ではないですが、海外への支援に対する見方が少し変わったように思いました。