最近海洋プラスチックごみ問題について調べ、その関連で「海」を取り巻く状況について知るため本書を読みました。
本書では、海の熱波や酸性化、プラスチックごみに酸素の減少といった海が陥っている危機について解説されています。
今回は『追いつめられる海』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

- 著者
- 井田徹治
- 訳者
- -
- 出版社
- 岩波書店(岩波科学ライブラリー)
- 発行日
- 2020年04月09日
この本について
どのような本か
ジャンル
社会、自然科学
テーマ
海を取り巻く危機的な状況について学び今後の在り方を考える
どんな人に向いているか
- 海について知りたい人
- 環境問題に関心のある人
注目した要素
- 1
海を取り巻く危機
海の熱波、酸性化、プラスチックごみ、酸素の減少、漁業資源の減少 - 2
影響を及ぼした人間の行動
温室効果ガスの放出、プラスチックごみの流出、窒素の環境への固定化、漁獲量の増加 - 3
今後の方針
再生可能エネルギーの活用、藻場やマングローブ林、湿地の保全など。「ブルーエコノミー」に基づく?
所感メモ
本書を選んだ理由
最近、プラスチックごみ問題を取り扱った本を読み、さらに関連本を探していたところ本書を見つけました。
そして現在海におこっている異変についてさらに知るため本書を読みました。
地球温暖化に付随する問題
今まではプラスチックごみにばかり注目していましたが、結局は避けて通れない問題であるようです。
地球温暖化、引いては二酸化炭素の放出によって起こっている問題についてです。
本書で挙げられているもののうち
- 海の熱波
- 海の酸性化
- 漁業資源の減少
これらは直接的・間接的併せて温暖化が影響している項目でした。
特に「海の熱波」については今まで知らなかったため、どういったものか残しておきたいと思います。
該当部分を引用します。
陸上の熱波はよく知られているが、海にも熱波があることが最近になって分かってきた。海の熱波はまだ明確な定義がなされた現象とはいいがたいが、何千キロにもわたって水温が、通常の変動を大きく超えて異常に高くなる海域が生まれ、少なくとも数日間、時にはそれが数か月も続く現象のことをいう。面積は時には一万平方キロに及び、一年以上続くこともある。一九八〇年代初めから世界各地の海で観測されるようになった。
最近では「その地域の海水温変動の上位九〇パーセントタイルを上回る高水温状態が少なくとも五日間続く現象」という定義をされるようになった。
『追いつめられる海』P.13-14より引用
子の熱波の影響によって海の生態系が乱される、災害が増えるなど様々な事例が挙げられています。
いくつか挙げてみると
- アシカやクジラの大量座礁
- 暖かい海を嫌ったサケが回遊してこなくなる
- 赤潮の発生
- サンゴの白化
- 魚の生息域の変化
などです。原因としては明確に判明していないようですが、地球温暖化により気温が上がることにより、海が吸収する熱量も増加することが影響するのではないかとされています。
気温の上昇、海水温の上昇自体はよく耳にする機会はあり、氷床を溶かす、生態系を脅かすという話は聞きますが、「海の熱波」というように局所的(なのか?)に、かつ長期間の「熱波」として襲うこともあるという話は今回初めて知りました。
これからも似たような事例が無いか気にして調べてみたいと思います。
海の酸素減少
これも、話では聞きつつも今まであまり触れて来なかった内容でした。
本書では「デッドゾーン」という言葉で説明されていました。
これが発生する要因として以下のような流れが示されています。
- 生活排水や農業廃水に含まれるリンや窒素が海に流入
- プランクトンが大量発生し、海底にその死骸が蓄積
- 死骸が微生物に分解される過程で酸素が大量に消費される
- 水に溶けた酸素量が少ない「貧酸素水塊」が形成される
こういった過程によって海の酸素量が減少してしまうようです。
当然こうなった海は生物が棲みづらくなり、生物多様性に大きな影響を与えます。
そして、「低酸素」が「無酸素」にまで到達してしまうと、特殊な環境を好む最近以外の生物以外は存在しない海になってしまいます。
先程の「デッドゾーン」というのは一リットル当たりの酸素量が二ミリグラム以下にまで酸素濃度が低下した海域のことを指すそうです。
また、この酸素量の減少の原因として挙げられている窒素やリンの流入についての記述を引用してみます。
一九〇六年、大気中にある窒素を固定してアンモニアをつくる手法を手にした人類は安価な窒素肥料を大量に使えるようになった。この技術は農業生活の拡大に大きく貢献し「空気からパンをつくる」といわれたほどだ。以来、人類は大量の窒素肥料を地上や海の生態系に放出してきた。これに加えて、化石燃料を燃やすと大気中の窒素を基に窒素酸化物が発生し、その多くがやがては地上や海に降り注ぐこととなる。さらに大豆などの栽培面積が増えれば、菌根菌によって固定される窒素も増える。こうして、環境への窒素の負荷は二〇世紀初め以降、一貫して増え続けている。
『追いつめられる海』P.93-94より引用
以前、地下水に関する本でも農業用の肥料からアンモニアという形で窒素が流入することによる地下水の汚染について挙げられていました。
これもまた立派な環境汚染の形と言えそうです。
発展を考える
過去の大量絶滅との共通点?
今回は海に起きている危機的な変化についての本でした。
読んでいて気づくこととして、本書で挙げられている内容
- 海水温の上昇
- 生物の生息域の変化
- 富栄養化の結果として海の酸性化
- 酸素量の減少
など、今まで大量絶滅を取り扱った本で見たような内容がそのまま現状の海でも起こっているようです。
過去発生した大量絶滅でも気候変動の結果として同様の減少が積み重なり、その時代に生きていた生物の多くが死滅し、生態系が入れ替わるという事件が起きています。
もちろん、同じ星の上で同じ資源を循環させて生活している以上当然のことではあるのかもしれませんが、このままこの傾向が続けばまた大量絶滅を経験することになるのかもしれません。
何なら、現在すでに6度目の大量絶滅が始まっているという説も存在していると聞きます。
何にしても、過去の絶滅から学び、個人レベルでもどうしていくか考える必要がありそうです。
関連する読書メモ
・『大量絶滅はなぜ起きるのか』
三畳紀末の大量絶滅の原因を調査する研究者の方が書かれた本です。本書で挙げられているのと同じような現象の積み重ねによって大量絶滅が発生したことが示唆されています。
・『見えない巨大水脈 地下水の科学』
地下水の教科書のような本です。こちらでも農業用の窒素肥料による地下水の汚染についての記述があります。環境汚染を考える上で、今回の海の酸素量減少の話と合わせて「窒素」も重要な要素となりそうです。
・『海洋プラスチック汚染』
本書でも取り上げられているプラスチックごみによる海洋汚染についての本です。さらに詳しく知りたい場合は本書が体系的に説明されていて良いと思います。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- ブルーエコノミー
ひとこと
海に起きている危機についてまとめて知ることができる本でした。
引き続き、気候変動やプラスチックごみ問題にとどまらず、海の変化についても学んでいきたいと思います。