「プラスチックごみ問題」について学ぶため本書を読みました。
本書では、プラスチックごみ問題と海の汚染、プラスチックの回収やリサイクルといった問題について、起業家の観点からみたという視点が提示されています。
今回は『海と地域を蘇らせる プラスチック「革命」』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

- 著者
- グンター・パウリ、マルコ・シメオーニ
- 訳者
- 枝廣淳子 監訳 日経ESG 編
- 出版社
- 日経BPマーケティング
- 発行日
- 2020年06月01日
この本について
どのような本か
ジャンル
社会、自然科学
テーマ
ビジネスの観点から海のプラスチックごみ汚染やプラスチックリサイクルの問題を見る
どんな人に向いているか
- プラスチックごみ問題の解決策を考えたい人
- 環境問題について調べている人
注目した要素
- 1
消費社会の失敗
消費者が使用したたくさんのプラスチック製品によって海が汚染刺されている現状が示すこととして「現代の消費社会が完全に失敗している」ということ。プラスチックリサイクルシステムもまた上手くいっていない - 2
プラスチック問題解決に向けての原則
原則1───予防原則
原則2───すべてが再生可能
原則3───拡大生産者責任
原則4───くっ付けられたものなら、解体できる - 3
提案されているビジネス
バイオマスおむつによるプラスチック汚染と土壌の劣化両方への対応、天然の添加物の開発、プラスチックごみをエネルギーに変えることでごみに価値を与える、海藻の養殖によるマイクロプラスチックの回収など
所感メモ
本書を選んだ理由
海洋のプラスチックごみ問題について調べる一環として本書を読みました。
ただ、ひたすら汚染の減少と「対策が必要であろう」のような結論を読み続けていても意味がないため、解決策を考えるような方向性の本は無いかと探していて本書を見つけました。
プラスチックと土壌
ここからは本書で解説されている対プラスチック汚染案の内、特に面白いと思った内容を取り上げてみます。
まずは、バイオマスを使用したおむつの話です。
現在、IPCCが2019年に発表した『気候変動と土地』特別報告書にて、地球温暖化によって、既に地球上の土壌の3分の1が劣化しているという発表があったということです。
土壌が劣化すると、そこから採れた作物に含まれる栄養素も減っていくことになります。これは野菜は土壌から吸い上げられないものは提供できないからだそうです。
そして、我々人類はそのただでさえ劣化して栄養素を失いかけている土壌から採れた作物を食べ、その結果生まれた人間の排泄物を自然に返すことなく廃棄してしまっています。
500年以上前に、レオナルド・ダビンチは今日の危機を予見していた。「希少な資源を捨てるという不当な廃棄物管理を行えば、食糧生産の未来も人類の未来も損なわれるだろう」と警告していたのである。私たちは、土壌をムダにしているだけでなく、廃棄物もムダにしている。ダビンチは、下水回収による衛生管理を行えば人間の件k脳に恩恵があるだろうと理解していた。しかし、人間の排泄物には、軽率に捨てるべきではない貴重な栄養素が含まれていることも知っていた。今日、下水汚泥は処理されているかもしれないが、生産的な形で活用されていることはめったにない。そして、ほかの廃棄物は何も生産することのないごみ埋立地に送られる。
『海と地域を蘇らせる プラスチック「革命」』P.84より引用
これはプラスチックごみ問題に留まらず、覚えておきたい視点だと思いました。
排泄物の「処理」という言い方をついしてしまいますが、「活用」という観点も今後は必要となっていくでしょう。
そして、ここから「使い捨ておむつ」の話題につながっていました。
使い捨ておむつ1枚分のプラスチックをつくるのに200mlの原油が必要となり、発展途上国ではおむつが川や海にたどり着くことでプラスチックごみ汚染を引き起こし、望ましいものではありません。
そのため、
- バイオマスから作られる堆肥化可能なおむつを配布
- 使用後のおむつを回収
- バイオマスと炭を混ぜて黒土「テラプレタ」をつくる
- 公園にその土を入れ、果樹を植える
- 実った果実を加工して食べる
このように土壌とプラスチックごみ汚染の両方に対応できる方法が解説されていました。
海藻によるマイクロプラスチックの回収
続いて海藻によってマイクロプラスチックを回収する方法についてです。
近年、新しい海藻パイオニアたちがコンブ養殖の実験を行ってきた。1ha当たり1000tに及ぶ収量を達成し、海藻の極めて高い生産性を裏付けている場所もある。しかし驚いたことに、似たような環境下の別の場所では、それほど豊かな収穫ができなかった。科学者が実験室で海藻の分析を行った結果、厄介な事実に気づいた。海藻の小さな孔に極小のプラスチックが入り込み、生長を阻害していたのだ。
それは、最初に分かった時には良くないニュースだった。海藻の生長が遅ければ、生産できるバイオガスと肥料の量が減り、新しいビジネスモデルが成り立たなくなってしまうと思われたからだ。しかしその後、「いや、非常に前途有望なチャンスに出くわしたのだ」と気づいた。これでマイクロプラスチックの回収システムが設計できると気付いたのだ。ほんの少し手を貸せば、自然界はいつも行っている「回復と再生」ができるようになる。
『海と地域を蘇らせる プラスチック「革命」』P.118より引用
これはかなり革命的な発見ではないかと思います。
マイクロプラスチックの回収は困難であるとされる場合が多いですが、海藻という自然界の力を借りる(活かす?)ことによって回収が可能になるかもしれないという夢のある話だと思いました。
また、回収した海藻は洗い流すことでマイクロプラスチックを除去できるとされており、食料やバイオガス、肥料としても利用できます。また、同時に本書ではプラスチックをエネルギーに変える方法も解説されていましたので、それと合わせることである種持続可能なエネルギーを作りだすことができます。
この手法は現在どうなっているのか改めて調べてみたいです。
何にしても、少しずつ研究は進歩しており、プラスチックごみに価値を見出しさらに回収を促す可能性のある、ぜひ発展していってほしい手法でした。
発展を考える
解決への希望?
本書はプラスチックごみ問題にかかわらず、プラスチックビジネス全体に対して、問題点と解決策を提示しようとする本でした。
本書で紹介されている事例を読んだだけでも、深刻なプラスチック汚染についての研究が日々進歩しており、解決への動きが存在していることを感じられます。
実際この動きがどの程度世界的に広がり、どの程度の成果を発揮し、現在のプラスチック汚染問題へ効果を発揮していくのかは分かりませんが、こういった新しいビジネスが存在していることを知るだけでも希望があるように思います。
どうせ自分のお金を投じるのであれば、こういった活動に対して本当の意味での「投資」ができたらいいなと思いました。
引き続きこういったプラスチック汚染問題についての研究や解決策について調べていけたらいいなと思います。
関連する読書メモ
・『海洋プラスチックごみ問題の真実』
海洋プラスチック問題の現状と研究の状況について述べられている本です。一通りプラスチックごみ問題の概要は知ることができるのではないかと思います。
・『海洋プラスチック汚染』
同じく海洋プラスチックごみ問題について一通りまとめられている本です。こちらはより「読者が知りたいであろう」方向に焦点が合わせられているように感じられ、入門用として良いと思います。
気になった言葉
後日調査したらリンクを追加予定です。
- 土壌
- 海藻
ひとこと
海もプラスチックごみ問題は相変わらず深刻ですが、それと同時に解決策を考え、持続可能なビジネスとして扱おうとする動きが複数あることを知って少し希望が湧いてきたように思います。