その山を見上げて

読書と思考を積み上げていきます。

『ゾウの時間 ネズミの時間』──「サイズ」に関する考察集

とても有名な本だと思います。

私も何かの教材でこちらの本の引用に触れた記憶があり、折角ならと思い一冊通して読んでみました。

本書では、サイズの違いから生物に共通する設計を読み解く、植物と棘皮動物の戦損戦略といった内容が扱われていました。

今回は『ゾウの時間 ネズミの時間』を読んで、目に留まった要素を残しておきます。

書籍情報
『ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学』の書影
『ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学』
著者
本川達雄
訳者
-
出版社
中央公論新社(中公新書)
発行日
1992年08月25日
※書影は出版社公式サイトより引用
目次

この本について

どのような本か

ジャンル

自然科学

テーマ

サイズの違う生物の比較から共通の特徴を考える

どんな人に向いているか

  • 生物学に関心を持つ人?

注目した要素

  1. 1

    サイズによって時間が変わる
    時間は体重の1/4乗に比例する。体重が増えると時間も長くなる

  2. 2

    島の規則
    縞に隔離されるとサイズの大きい動物は小さくなり、サイズの小さい動物は小さくなる

  3. 3

    植物と棘皮動物
    動かない植物の構造はユニットを積み上げるもの、棘皮動物の構造はキャッチ結合組織を活用するもの

所感メモ

本書を選んだ理由

有名な本でしたので、一度通して読んでみたいと思い手に取りました。

サイズによって時間が変わる

本書のタイトルになっている『ゾウの時間 ネズミの時間』に該当する内容です。

動物の心臓の脈打つ感覚を測定して、体重との関係を比較すると「時間は体重の1/4乗に比例する」という関係が浮かび上がってくるというもの。

このため、生物のサイズによって流れている(体感する?)時間の長さが全く異なる、違う時間の中で生きているということになるようです。

 日常の活動の時間も、やはり体重の1/4に比例する。息をする時間間隔、心臓が打つ間隔、庁が一回じわっと蠕動する時間、血が体内を一巡する時間、体外から入った異物を再び体外へと除去するのに要する時間、タンパク質が合成されてから壊されるまでの時間、等々。

(中略)

 物理的時間で測れば、ゾウはネズミより、ずっと長生きである。ネズミは数年しか生きないが、ゾウは一〇〇年近い寿命を持つ。しかし、もし心臓の拍動を時間として考えるならば、ゾウもネズミも全く同じ長さだけ生きて死ぬことになるだろう。小さい動物では、体内で起こるよろずの減少のテンポが速いのだから、物理的な寿命が短いといったって、一生を生き切った感覚は存外ゾウもネズミも変わらないのではないか。

『ゾウの時間 ネズミの時間』P.4,6より引用

寿命は異なるにもかかわらず、体感としては同じ一生を生きたように感じるということは、生物によって時間の感じ方が異なるということだと思います。

生物によって時間の感じ方が異なるなら、その生物の価値観、行動原理も違ってくる可能性が高いです。

これは物理的な時間と区別して「生理的時間」と呼ばれているようで、本当にその生物を理解したいのであればこの生理的時間にも着目しないといけないということになってきそうです。

ユクスキュルの『生物から見た世界』にて「環世界」という考え方が登場しますが、本書の「生理的時間」もまた合わせて自分とは異なる存在を理解しようとする上で避けて通れない概念となるのかもしれません。

発展を考える

植物について

本書はそれを目的として選んだわけではありませんが、別テーマとして「植物」についても調べているので、関連する内容を残しておきます。

 サンゴ時の類似点をあげてきたが、これは、太陽の光を必要とし、動かずに地面に固着して生活する生き物が、進化の結果、同じようなデザインになったということであろう。そのデザインとは、硬いからで覆われたユニットが集まった「群体」である。

(中略)

 さて、では、ユニットが集まった群体の特徴はどうだろうか。太陽の光をよりよく受け取るためには、体は大きい方がいい。そして、大きくて動かないものはユニット構造で体をつくると、簡単につくれる。同じユニットを積み上げていくだけだから、作るのも簡単だろうし、製造コストも安くあがるだろう。だから同じコストで比較するなら、ユニット構造をとる方が大きくなれるだろう。

『ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学』P.179-180より引用

植物の本ではたびたびこのよう内容に触れられているのを目にします。

根や葉などの部位による多少の機能の違いはあれど全身が同じような細胞でできており、一部が欠損しても再生がしやすいとされています。

また、本書ではサイズに関する話題がまとめられているため、このような群体を取ることで

  • 成長するのが簡単
  • ユニットの付け足しである程度移動が可能
  • 低コストで大きくなれる

といったように、植物のような「動かない」生物に適した構造になっているようです。

関連する読書メモ

・『生物から見た世界』

有名な生物学の古典です。生物はそれぞれ固有の”環世界”の中で生きており、我々が環境とよんでいるのは「人間の環世界」でしかないのではというような考え方が提唱されています。本書の生物によって時間が異なるという考え方と少し共通するように思います。

bookandthink.com

気になった言葉

後日調査したらリンクを追加予定です。

  • キャッチ結合組織
  • サンゴ

ひとこと

本書は生物に関する考察を複数本まとめたモノでした。

タイトルにある『ゾウの時間 ネズミの時間』に該当する部分はそれほど長くなく、副題としてついている「サイズの生物学」の方がタイトルとして適していたのではと思いました。